M&A巧者の共通点2:フットワークが軽い人
M&A巧者の2つ目の共通点は、自分から従業員の懐に飛び込んでいくような「フットワークが軽い人」である。
M&A後の新社長が避けなくてはならないのは、「もし自分に対して不満や不安があれば、従業員のほうからアプローチして気持ちを打ち明けてくれるだろう」という待ちの姿勢だ。「社長室のドアは、いつも開けてある」と胸を張ったところで、訪ねてくる従業員はまずいない。
このようなとき、M&A巧者の社長は、従業員が近づいてくるのを待つのではなく、自分から近づいていく。社長室にこもって仕事をするのではなく、オフィスや工場のなかを絶えず歩き、積極的に従業員に声をかけていく。
さらには、普段のコミュニケーションに留まらず、従業員の一人ひとりとオフィシャルな面談を設定し、声を丁寧に拾っていくのも、彼らの特徴だ。
ある会社の新社長は、2カ月かけて、40人の従業員全員との面談を実行した。しかも、それを1回で終わらせるのではなく、数サイクル繰り返したのだ。そこまでの労力をかけて、効果がゼロということは、もちろんない。最初は警戒して本音を明かさなかった従業員も、回を重ねるごとに心を開いてくれるようになっていった。
従業員の本当の声を聞くには、自ら動いて一対一の場をつくり、双方向のコミュニケーションを心がける必要があるだろう。規模にもよるが、従業員が100人ほどの中堅・中小企業であれば、十分に可能なはずだ。