CD販売停止は1999年の槇原敬之の覚醒剤事件から
元号が昭和から平成に変わった1989年6月、美空ひばりが死去し、政府から国民栄誉賞を贈られる。かつて家族の不祥事により公共施設から締め出された歌謡界の女王は、死して昭和を代表する国民的スターに祀り上げられた。
同じ年の4月、横山やすしは、飲酒運転による事故を起こし、吉本興業からすべての契約を解除される。前月にタレントの長男の傷害事件による4カ月の謹慎からテレビに復帰したばかりだったが、謹慎中にも交通人身事故を起こすなど、不祥事を重ねた末の事実上の「懲戒解雇」であった。
平成の30年間には、芸能界や音楽業界で清浄化が進んだ。芸能人と暴力団の関係についても規制が強まり、判明した場合は厳しく処分されるようになった。2011年には、タレントの島田紳助の暴力団関係者との交際が発覚し、本人がけじめをとって引退する。多くのレギュラー番組を持っていた大物だけに、その決断は衝撃を与えた。
薬物事件で逮捕されたミュージシャンのCDの販売が停止されるというケースもあいつぐ。これは1999年の槇原敬之の覚醒剤事件を機に定着したものといわれる。このとき、CDの出荷停止と店頭からの回収を決めたレコード会社は「社会的活動を行っている当社が、反社会的不法行為を犯した槇原の商品を出荷するわけにはいかない」と説明した(『朝日新聞』大阪版1999年10月4日付)。
結局は「商品イメージを傷つけないため」の行動
不法行為ではないにもかかわらず、世間の批判を受けて活動を自粛するケースもたびたび起こった。
2008年には、人気歌手のラジオ番組でのある発言がインターネット上で物議を醸す。これを受け、本人が公式ホームページで謝罪、所属レコード会社は活動自粛を発表した。しかし謝罪したことがかえって火に油を注いでしまう。スポンサー各社は出演CMを自粛、本人の掲載されている商品のHPも削除するなど対応する。テレビでも騒動後に放送された出演番組に抗議が殺到、これを受けてか別の番組が放送延期されるにおよんだ(『読売ウィークリー』2008年2月24日号)。
インターネットの普及により、一般人の意見がより影響力を持つようになったがための現象だろう。スポンサーがすぐに出演CMを自粛したのは、そうした一般からのクレームをあらかじめかわし、商品イメージを傷つけないための行動ともとれる。商業上の理由による対応という意味では、方向性は違うものの、テレビ各局がたけしを事件後早々に復帰させたのと変わりはない。