週報がなくなり部下が何しているのかわかりません

【悩み】化粧品・課長●森本さん(入社16年目)
仕事量を減らそうと、これまで提出必須だった週報がなくなりました。在宅勤務などで自由な働き方ができるのはいいのですが、部下が何をしているのか把握できず少し不安に感じます。
【回答】

会社の理念が部下ときちんと共有できていますか? なぜ会社に集うのか、それが組織の存在目的です。サイボウズの場合、「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念があります。そのためには多様な働き方をしたほうが効果的だと思っているのです。会社には企業理念に共感した人が集まっているから、上司の目がなくても理念の実現のために働きます。しかし企業理念に共感できない社員だと在宅勤務の制度を使って仕事をさぼるかもしれません。「給料がいい」「安定している」ことが入社理由だと、在宅勤務などの制度がうまく機能しないかもしれません。

多様な働き方を許容するうえで大切なのはウソをつかない風土をつくること。在宅勤務などでお互い顔が見えない状態で仕事をするわけですから、隠しごとをされると不信感を抱いてしまう。サイボウズはアホはいいけど、ウソはだめだという「公明正大」を大切にしています。勤務時間中であっても「いまから1時間副業をします」と宣言すればOK。始業時間に遅れて「二日酔いして寝坊しました」というのはアホだけど許されます。でもその理由を隠したら安心して一緒に働くことはできません。

社員が働かなくなって、会社の将来が心配です

【悩み】保険・若手●長山さん(入社7年目)
出退勤の管理が厳しくなって休日の出勤ができなくなりました。仕事量は減ったのですが、自分の成長速度が遅くなったと感じています。会社としても厳しい局面が来たときに対応できるか心配です。
【回答】

会社にいないと成長できないというのはあまりに狭すぎる考え方です。会社から出てこそ貴重な経験ができ、それが仕事の糧になっていきます。私の場合もそうでした。子どもが生まれるまでは会社のなかが仕事の唯一のフィールドで、ソフトウエア事業のことしか知りませんでした。

子どもが生まれるといままで接したことのない世界にいやおうなく放り込まれます。子どもが熱を出せば病院に行くことになります。ときには看護師が泣きわめく子どもをうまくあやすのを見て、コミュニケーションの勉強になったりもします。私は子どもが生まれて妻と家事・育児を分担するようになってから子どもを取り巻く医療や教育、行政の事情に詳しくなり、問題や課題について人一倍語れるようになりました。そして、そういう問題や課題をビジネスの力で解決できないかとも考えるようになり、仕事に対する考えの幅がぐっと広がったのです。

会社にいなければ成長できないというのは幻想です。朝から晩までオフィスにいる人から面白いアイデアが出るはずがありません。イノベーションを問われる時代、会社の外に活動の場を広げたほうが新しい発想が生まれるはずです。

※相談者の名前は仮名です。

青野慶久(あおの・よしひさ)
サイボウズ代表取締役社長
1971年、愛媛県生まれ。大阪大学卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年サイボウズを設立。2005年より現職。総務省、厚生労働省、経済産業省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを務める。
(構成=Top Communication 撮影=大槻純一)
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