株主優待制度を導入する銘柄は「過去最多」に

わが国では、株主還元の一環として“優待制度”を重視する企業が多い。株主優待とは、企業が自社の製品や商品券などを株主に提供することだ。

野村インベスター・リレーションズによると、2019年2月末現在、株主優待制度を導入する銘柄(REIT=不動産投資信託などを含む)は1517と、調査開始の1992年以降で過去最多となった。上場銘柄数に占める割合は37.1%だという。

多くの企業は、株式を長期間保有するほど株主のメリットも優遇される仕組みをとっている。経営の安定性を高めるために、安定株主としての個人投資家の取り込みを重視する企業は増えている。今後も、この考えは強まるだろう。優待制度に魅力を感じる人も多い。ある個人投資家は「株主優待は配当に加え商品などをもらえる。お得だ」と話していた。

ただ、やや気になるケースもある。優待制度によっては、商品券を株主に提供している。これは個人投資家への誘因(お化粧)の性格が強い。商品券を配るなら、その分を配当金として支払えばよい。こうしたケースを見ると、企業が持続的な成長を実現し、その上で株主への価値還元を行っているか、冷静に見直す必要がある。

「株式の持ち合い」が崩れ、株主優待が浮上した

企業は、長期にわたって自社の株式を保有する株主(安定株主)を増やさなければならない。それは、経営者の“安心感”に大きく影響する。

短期間で株主の顔ぶれが大きく入れ替わると、経営者が多様な利害を調整することが難しくなる。安定株主の獲得は、経営の持続性を左右する。多くの企業がインベスター・リレーションズ(IR)業務を通して内外の投資家との関係を強化したり、株主優待制度を導入して個人の株主を増やそうとしている。

特に、“株式の持ち合い”というわが国の慣行が崩れてきたマグニチュードは大きい。第2次世界大戦後、わが国企業は、グループ企業や、重要取引先の企業、銀行、保険会社などと株式を相互に保有した。特に株式持ち合いの重要性が高まったのは1960年代だ。