民間と同じ「不足1人当たり年60万円」

「民間には“罰金”を課しておきながら、役所は水増しで法定雇用率をクリアしたように偽装していた。まったく許せません。民間並みの“罰金”は当然ですが、果たしてきちんと対応するのか」

中堅上場企業の人事担当者は憤る。

法律で定められた障害者の法定雇用率をめぐって中央省庁が障害者雇用数を水増ししていた問題で、政府は3月19日、中央省庁にも“罰金”を課すルールを導入することを決めた。

国の行政機関が法定雇用率を達成できなかった場合、不足1人当たり年60万円を各府省の翌年度の予算から減額する仕組みで、2020年度から導入する。民間企業には未達成の場合、不足1人につき原則、月5万円(年60万円)の納付金を国に支払う仕組みがあり、これと平仄(ひょうそく)を合わせることになる。

新制度では、雑費などに充てられている「庁費」から減額することとなる。予定していた人数の障害者を雇えなかった場合、その人件費が浮くことになるが、その分は障害者の雇用促進策に活用するという。また、各省庁の官房長らを障害者雇用の責任者とし、達成できなかった場合などは人事評価でマイナス評価とするとしている。

2019年03月19日、「障害者雇用水増し問題に関する関係閣僚会議」で発言する安倍晋三首相(左から2人目)。左端は根本匠厚生労働相(写真=時事通信フォト)

霞が関で相次ぐ「数値の改ざん」

実は障害者の法定雇用率は2018年4月1日から引き上げられたばかりだった。民間企業は従来の2.0%から2.2%に、国や地方公共団体などは2.3%から2.5%に変わった。さらに3年以内に0.1%上乗せすることも決まっている。

そんな中、発覚したのが雇用者数の「水増し」だった。次々と明らかになり、最終的には国の28の行政機関で3700人分が水増し算入されていたことが判明した。厚生労働省が設置した第三者検証委員会(委員長、松井巌・元福岡高検検事長)は報告書で、雇用率に算入できる障害者の範囲などについて「厚生労働省の周知が不十分だった」と指摘、その上で、各省庁が「法定雇用率を達成させようとするあまり、範囲や確認方法を恣意的に解釈していた」とした。

霞が関による数値の改ざんが相次いでいる。厚生労働省による裁量労働制をめぐるデータでは、調査方法の違う2つのデータを単純比較し、あたかも裁量労働制の人の方が、労働時間が短いということを示そうとした。安倍晋三首相の答弁に使われたが、結局、データがいい加減だということになり、首相は答弁を撤回。法案から裁量労働制拡大の条項を削除することになった。2018年2月のことだ。

3月には森友学園問題をめぐる財務省の公文書改ざんが発覚。官僚OBからも「信じられない」という声が上がったが、結局、麻生太郎副総理兼財務相は辞任することなく乗り切った。

そして発覚したのが障害者雇用の水増し問題だったが、一般の人にはなじみが薄かったせいか、あまり大きく批判が盛り上がることはなかった。