苦手な仕事であっても、やらなければいけないことはある。そんなときに、集中力を高めるための工夫はあるのだろうか。これはなかなかの難問である。

箱田忠昭さんは、こんな例をあげる。

「半年で終わる大プロジェクトがあるとします。人は『これがうまくいけば会社から認められ、出世するし給料も上がる』と考えて、つまりは半年後の達成感を目標に頑張るのですが、実際には半年先の達成感というのはなかなかピンとこないものです」

では、どうすればいいのか。

「1カ月ごとに“小達成感”を得るようにすればいいのです。たとえば毎月のミーティングで進捗状況を報告し、部長から褒められれば達成感を味わえますね。このように苦手な仕事で、やる気が起きないときも、イージーな目標を達成して認められるという繰り返しがあれば、最終的には大きな目標に到達できます。もし上司に恵まれない場合は、今月の目標をクリアしたら居酒屋で酒を飲み、デートしようとか、自分で小さな目標を設定するのもいいでしょう」

枝廣淳子さんは自らの経験をもとに、こんなアドバイスをする。

「単調で飽きてしまうような仕事のときは、リズムをつくればいいと思います。私の場合、苦手分野の翻訳を進めるときにこんなことをやりました。30ページ分を翻訳するというときに、1から30までの数字を紙に書き出しておき、1ページ分の翻訳が終わるたびに数字を塗りつぶしていくのです」

一方、「自分にとって苦手なスキルを使うために身が入らない」というケースのときは、こんなふうに考えるようにする。

「『お金をもらいながらスキルを伸ばせるのだ』とポジティブに考えることですね。翻訳の仕事であれば、依頼主に細かく質問したり、参考図書を買い集めて読み込んだりするのです。そうすることで、苦手意識が薄れていきます」

川本裕子さんも、こう指摘する。

「『苦手な仕事』といいますが、それをやることで、どのような効果があるのかを考えてみたらどうでしょう。それを達成できれば、いままでできなかったことができる自分、未知だった自分に出会えるのです」

(談=川本 裕子、箱田忠昭、枝廣淳子、丸山 学、横田 雅俊、堀 義人)