夏の大会に比べて記録が狙いやすいのも、冬の大会の特徴だ。ただし屋外競技は、当日の気候条件に左右される。昨年の同大会は小雪が舞った。今年は晴れたが最高気温は9℃程度。参加者の中にはランニングウェアの上からプラスチック製のごみ袋をかぶる人も目立った。

「これは風よけです。スタートを待つ間に身体が冷えてしまうので」(ある女性ランナー)

走る間はランニングパンツに入れるという。「コースは平たんだが、○○に出たら風が強い」といった詳細情報は、事前にネットで知ることもできる。

1万人の市民が大会を支えている

開催地にとって、「勝田全国マラソン」はどんな位置づけなのか。ひたちなか市に取材を申し込んだところ、大会会長の市長ではなく、スポーツ振興課長から回答があった。

「ランナー、ボランティア、そして沿道の応援として参加する市民は1万人を超えています。大会の開催そのものが市民の誇りであるとともに、地域住民の連帯意識やまちづくりへの参加意欲が育まれ、地域の活性化につながっています」

大会規模や歴史の割に、同大会は企業からの協賛金が少ない。「2016年に始まった県庁所在地・水戸の『水戸黄門漫遊マラソン』の協賛金が約4000万円に対し、『勝田』は1000万円未満」と聞く。協賛企業が、近年予算を減らしたケースもある。

沿道には応援の市民が集まる(写真提供=ひたちなか市)

警備も市民の協力でしのいでいる

このため2万人を超えるランナーが安全に走るためには、市民の協力が必要だ。高齢化に伴い、参加者の平均年齢も上がってきた。「勝田」は、レース中はAED(自動体外式除細動器)を持った、茨城県内の大学生による自転車の“見回り隊”が巡回する。

一般にマラソン大会は「警備費」がかさむ。東京マラソンの価格改定理由もこれが大きい。各大会は地元警察や消防、自衛隊に協力を仰ぐが、参加人数が多いと民間の警備会社に委託する。ひたちなか市の場合、市民の協力でなんとかしのぐが、こんな声も聞く。

「大会実施中は、交通規制で走れない道路もあり、目的地まで時間がかかります。その分、料金もかさむ。お客さんに理解してもらうのに苦労します」(タクシーの運転手)

一般市民からは「当日はクルマで外出しにくい」という声も聞いた。年に一度の大会に多くの市民が協力する一方、こうした市民の忍耐で支えられる一面もある。