韓国ビール最大ブランドをすでに買収済み
本邦初の混成営業部隊は、東京などの都市部を中心に飲食攻略を進めていくはずだ。
もっとも、営業を支えるのは生産体制である。特に、飲食店向けの樽はサーバーで供する生ビールであり、品質と鮮度は求められる。このため、はるばるアメリカ工場から太平洋を船で運搬するのではなく、日本に至近な韓国OBビールが生産基地となった。OBビールは1998年にABI(当時のインターブリュー)が買収。現在のCEOは、コンセンティーノ氏が務めている。ライバルのハイトビールとともに韓国市場でシェアを二分しているOBビールで、最大ブランドのCASS(カス)は韓国で最も売れているブランドだ。
ちなみに、戦前までOBビールはキリンが出資していて、同じくハイトは大日本ビール(現在のアサヒビールとサッポロビール)の傘下だった。ハイトは昨年5月まで、大手流通のイオンから第3のビールのPB(プライベートブランド)の受諾製造をしていた。同6月からは、受諾製造先はキリンに切り替わっている。
M&Aを繰り返し、トヨタを時価総額で上回ったことも
日本のビール市場(発泡酒と第3のビールを含む出荷量)は世界市場の2.6%に当たる511.6万klにしか過ぎない(17年キリン調べ)。それでも世界では7位に位置し、世界15位の韓国市場と比べると2.2倍の規模だ。
18年は前年比2.5%減の498.69kl。14年連続で減少となり、現行の統計を取り始めた1992年以降では過去最低。最盛期の1994年と比べ、3割以上も市場は縮小している。少子高齢化、若者のビール離れなど理由はいくつもある。
一方、世界のビール産業にM&A(企業の合併・買収)、再編の波が押し寄せたのは1990年代の半ばから。その中心にいたのがABIだった。
とりわけ、リーマンショック直前の08年7月には、約5兆円を投じてバドワイザーをもっていた米アンハイザー・ブッシュの買収を決めた。これにより、社名はABIとなった。
そして、16年に世界2位だった英SABミラーを総額10兆1000億円で買収し、世界シェアは3割近くに達した。バドワイザーもコロナも、企業買収によって得たブランドである。
「ABIは投資会社。日本のビール会社も買収される」(アメリカのクラフトビール会社幹部)という見方はいつもある。だが、旧SABミラーが有していたアフリカ事業の不振から、株価は低迷。かつては16年にはトヨタ自動車を上回る時価総額を誇ったが、いまはM&Aを仕掛ける環境にはない。