いつの時代も若手を阻む「老害」。彼らが厄介なのは、自覚症状がないことだ。総合格闘家の青木真也氏は「自分自身が老害にならないように、とにかく下の世代を否定せず、信じるようにしている」という――。

※本稿は、青木真也『ストロング本能』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

誰だって「いまの若い者は」と言うようになる

いつの時代にも世代間のギャップはあります。社会に出たばかりのころは、上の世代から「いまの若い者は……」などと白い目で見られていた人も、20年も経てば下の世代に「いまの若い者は……」と言うようになるのです。これは世の常なので仕方ありません。

問題は、世代間で意見が対立したようなとき、どのようにジャッジすればいいかということです。会社などの組織に属していれば、意見が対立する場面も多々あるでしょう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/taa22)

上の世代は、場数を踏んできた強みがあるため、自分の実績や成功体験を語りたくなります。「俺はこんだけやってきたんだぞ! どやっ!!」と言いたくなるもの。一方で、若い世代が生み出した実績やカルチャーについては「そんなものは認めない」「よくわからないからダメだ」と批判しがちになります。

僕自身も、気づけば、そうなってしまうことがあります。しかし、やはりそうなったら負けだなとつくづく思うわけです。年を取っているということは、若者よりも先に逝く確率が高いということ。そのため、将来があるのは下の世代なので、どんどん下を信じなくては、ダメな人間になってしまう、これが僕の意見です。

世代間で意見が対立したときのジャッジにおいて、頭ごなしに下の世代を否定してしまうのは損なことです。とくに新規プロジェクトや新しいアイデア出しをするときなどは、創造性や発想力がピークに達するのは前頭葉の働きがいい20~30代と言われていますから、上の世代が想像する以上の成果を期待できるのです。

既得権でしか生きられないと、人生が不安でいっぱいになる

世代間の対立が表面化するような会社や組織は、一見、問題を抱えているようで、むしろ健全なのかもしれません。官僚的な体質の場合には、上の世代の力は絶対的です。でも、そうした組織で部下を持つ立場の人には、下の世代から意見を吸い上げることで得るものが大きいことに気づいてほしいと願います。

いつだって若者側に真実があります。格闘技やスポーツ界はそのあたりの真実がわかりやすい。いまの若い子たちがやっている技術のレベルは、僕が若いころに比べて確実に上のレベルです。スポーツはどんどん進化していきます。競技としてやっている以上、最先端が真実です。そこを否定し始めたら、成長はありません。

自分たちが成長するためには、新しいものに触れていかないといけないし、そこに触れ合える環境をずっと持っていないといけない。それができなくなってしまうと、気づいたら「老害ジジイ」になっているかもしれませんね。老害になった時点で終了です。老害は既得権で生きることしかできないから、人生が不安でいっぱいです。

懸命に芽をつぶそうとする老害もいますが、むしろ芽を育てたほうが楽しいと思うのは僕だけではないはず。若い子はどんどん出てきますから、全部刈り取るよりも、育てるほうが理にかなっています。どんどん若い子の才能をヘルプする、引き上げる。それが自然の摂理です。