学生から「起業相談」されることが多かった

僕は昨年1月に学長となって以来、いわゆるオープンドアのポリシーで、いつでも誰でも部屋に入ってきていいよ、と学生たちに話しています。メールアドレスも公表して、学生からも職員からもダイレクトにメールが送られてきます。

そういう学生たちの相談で目立って多いものが、卒業後の進路について、留学について、そして起業についての3つでした。進路相談、留学相談までは予期していましたが、これほど起業相談が多いのはちょっと意外でした。「これほど学生のニーズがあるのに、大学側が対応しないのは怠慢だ」と考えて、冒頭に話したAPU起業部の準備を2018年4月から進めました。

書類選考で事業計画がしっかりしていた32組、46人の学生を選び、ボランティアで参加してくださった6人の方に各組を割り当て個別指導してもらっています。APUはダイバーシティが進んだ大学で、学生のおよそ半分は外国からの留学生ですが、起業部もほぼ同じ比率で半分は留学生です。

このように、初めに事業計画書を提出させて審査するのはAPU起業部の特徴といえます。起業の意欲があるだけではなく、具体的な事業プランを持っている学生たちの集まりなのです。

実際にまもなく起業できそうな事例を3つ紹介します。

▼事例1:向島(尾道市)でアーモンドを栽培し、ブランディングする
・代表者の学生は広島県尾道市出身
・広島で減少する農業への問題解決や空き地の有効活用で、故郷の瀬戸内を盛り上げたいという思いからスタート
・現在は農地をアーモンド農園にしようと整備し、当面の資金は古民家を利用した「みなと組」というカフェを運営しながら集める予定
▼事例2:スリランカ料理のレストランを開業
・代表者の学生は4回生、スリランカ出身。卒業後の4月開業を目指す
・スリランカ料理をとおして、スリランカの文化を伝えたいという思いからスタート
・在学中に大学や別府市内のイベントなどでもブースを出してテスト販売するなど経験を積む
▼事例3:革製品の製造・販売
・代表者の学生はバングラデシュ出身
・バングラデシュは食肉にならない牛皮がごみ処理場や川に廃棄されて、悪臭や水質汚染などの環境問題が起こる。その問題解決として、捨てられる牛革を使った革製品を考えつく
・2018年11月からAPUの生協でも製品の販売をスタート
・今後はバングラデシュの女性の社会進出や教育支援のため、製造工場には女性を雇用する。売り上げから本を子供たちにプレゼントして識字率を向上させるなど、教育の改善を目指す