なぜ別府の山奥に全国から学生が集まるのか

日本人の学生も、およそ3分の2は東京や大阪など地元九州以外の出身者です。東京や大阪には大学はいくらでもあるのに、わざわざ別府の山奥まで進学してくるのですから相当に尖った学生たちです。

このような取り組みが認められ、イギリスの高等教育専門誌「ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション(Times Higher Education)」の世界大学ランキング日本版2018では、西日本の私立大学では第1位、全国の私大でも第5位に選ばれました。

APUには全国の大学から教職員のみなさんがよく視察に来られます。僕もぜひ参考にしてほしいので詳しく説明しますが、肩を落として帰られる方が少なくありません。

僕たちが毎年春と秋に年2回入学式を行い、外国人留学生向けの英語での入試を実施していること、教員の半分が外国人であること、職員の9割が英語に堪能なこと、生協ではハラール食品を販売したり、ムスリムフレンドリーの食事を提供していることなどをお話しすると、相当にハードルが高いと感じられるようです。

例えば、今年1月に中途採用した職員は、4人とも日本語も含めて3カ国語に堪能です。初めは日本語が一言も話せない留学生もいるので、風邪をひけば病院へ連れて行って通訳しなければいけないからです。

その一方で、英語基準で入学する留学生たちには日本語を学んでもらうほかに、日本人の社会常識や日常のルール、生活習慣などを知ってもらう必要があります。APUには約1200室の学生寮(APハウス)があり、1回生は原則として全員がここで暮らしています。シェアタイプは日本人の学生と留学生が必ず同室なので、ゴミ出しのルールをはじめ日本の社会常識が自然と身につきます。

日本で「ユニコーン」が生まれない理由

あと数カ月で平成の時代が終わろうとしています。この30年間を振り返ると、購買力平価で見たGDPで日本が世界に占める割合は、9%弱から4%強へと半減しました。スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が発表する国際競争力ランキングでは1位から25位に下がっています。

時価総額で世界のトップ企業を見ると、平成元年(1989)は世界ランキングの1位から5位までを日本企業が独占し、上位20社のうち実に14社が日本企業でした。ところが、平成30年(2018)になると、世界の上位20社に日本企業はランクインしていません。最高でもトヨタ自動車の35位です。

ここまで日本の国際競争力が落ち込んだ理由は何かといえば、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの新興企業に遅れを取ったからです。例えば2004年に創業したフェイスブックは、時価総額はすでにトヨタ自動車の2倍です。

今世界中でGAFAの予備軍と目されるユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業)が注目を集めています。現時点でユニコーンがどこにいるかといえばアメリカがおよそ150社、中国が70社、インドが17社、EUが31社あるのに対して、日本はゼロだといわれています。

こうして見ていくと、日本の国際競争力がこの30年間で低下した原因は、新しい産業を生み出せなかったことだということがわかります。経済政策やグローバル化の進展、少子高齢化なども影響したでしょうが、産業の新陳代謝がなかったことがダイレクトに効いているのです。

日本が90年代まで得意とした製造業は、いまやGDPに占める割合は2割を切ろうとしています。雇用者数ではすでに1割と大きく下回っています。日本の製造業はきわめて生産性が高く、国の宝といってよいものです。それを守っていきながらも、一方で新しい産業を創造しなければなりません。