財源は「上位1%の富裕層」への課税

あまりにも大きく大胆なアイデアだからという理由で、保証所得を擁護したがらない人もいる。もし導入されれば、労働者支援のために政府にできると思われていることが大きく広がることはまちがいない。それには莫大な費用がかかり、最富裕層への新たな課税が必要になる。試算によれば上位1%の富裕層に「勤勉なアメリカ人の所得と同じ税率」まで増税するだけで、財源はすべて賄える。

いまの政治が守りの体制に入っているからといって、より安定した正しい未来を構想し、実現することを放棄してはいけない。慎重になりすぎた政策がどんな結果を招くのかを、われわれは近年目の当たりにしてきた。また一丸となって目指すことのできる勇壮な野心が必要なことも、われわれは学んだ。大胆なアイデアを、馬鹿げているから、突飛だからという理由で避けていると、ポッカリ空いた穴をいたずらな脅威論や排外論が埋めてしまう。

ドナルド・トランプがこれまで進歩主義的価値観を攻撃してきたせいで、僕らのような左派の多くは、社会的セーフティネットを排除しようとする試みや不正に抵抗し、つねに守勢に回っているように感じている。だがこれは重要な仕事であり、僕と夫、多くの友人たちが生涯を捧げると決めた仕事だ。

そして守勢に立つだけでなく、この国をどんな国にしたいかという夢や希望に訴える、大胆な解決策を攻撃的に追求しなくてはならない。目先の政治的闘争がどんなに重要であっても、それにとらわれるあまり、大きな夢をもち、誰もが繁栄を謳歌できるアメリカ経済を構築する仕事をおろそかにしてはならない。

民主主義の基盤そのものが脅かされている

ニューエコノミーの恩恵を最も受けている人々は、経済の公平性ということについて大胆に考える特別な責任を負っている。

フェイスブックのIPO後、僕と夫は30歳にもならないうちに数億ドルの資産を手にした。そのとき、資産の大部分をより公正な世界を目指す取り組みに捧げようと決めた。そのために、僕らはこれまでさまざまな道を歩んできた。直接の慈善活動や政治活動もあれば、高級ジャーナリズムの柱を支える試みといった、思いがけない脇道もあった。成功したものもあれば、そうでないものもあった。

だが民主主義の基盤そのものが脅かされているように思われるいま、僕らはこの責務の緊急性をひしひしと感じている。保証所得を求める闘いと、それと並行するセーフティネットの防衛は、われわれがいま立ち向かわなくてはならない、最も喫緊で重要な課題だと考える。