世界は20世紀初頭に逆戻りしつつある

われわれがいま足を踏み入れようとしているのは、鉄道王や海運王が空前の財を成した20世紀初頭のような騒乱の時代だ。あの進歩主義時代の先進的なリーダーたちにならって、われわれも斬新で新しいアイデアを広く取り入れなくてはならない。

彼らは所得税を導入し、上院議員の直接選挙を施行し、選挙運動への企業献金を禁止し、女性に参政権を与え、最低賃金や老齢年金のような労働者保護の下地づくりを進めた。極端な不平等を解決するためにいま求められているのは、こうした大胆な施策だ。

富の格差の最も有効な解決策は、最もシンプルなものである。すなわち、最も必要とする人たちに現金をわたす。

僕が提案している「保証所得(ギャランティード・インカム)」という手法は、革新的で、なおかつきわめてわかりやすい考え方だ。年収5万ドル未満の世帯の成人労働者に、月500ドルの最低所得を保障すれば、9000万人のアメリカ人の生活を改善し、2000万人を一夜にして貧困から救うことができる。

賃金労働者だけでなく非正規労働者――幼い子どもをもつ親、高齢の親の介護をする人、学生など――にも分け隔てなく現金が給付される。そしてそれを負担するのは幸運な「1%の人たち」でなくてはならない。

「前の世代よりも少しよい暮らし」という希望がない

僕と同性のパートナーである夫は今年、第一子となる男の子を迎える予定だ。息子が暮らすことになるこの世界と、彼が占めることになる恵まれた立場のことを、僕はとても憂慮している。

彼はマンハッタンのグリニッジビレッジで育つことになる。もとはアーティストやクリエイティブな人たちが多く住む地域だったが、いまでは上位1%に属していなければ住めなくなりつつある。彼は僕の生家よりずっと広く立派な家に住み、お金で買える最高の食事や教育、医療を与えられるだろう。だがこうした恵みも、不安定と貧困が蔓延する国では何の価値ももたない。

資本主義の潮流は否応なしに不平等へと向かうため、市場を富裕層だけでなく万人のために機能させるには、不断の警戒が欠かせない。これは重要なことだ。なぜなら、ほとんどの人が基本的に公正な世界を望んでいるからであり、また近年のペースで富の集中が続けば資本主義の崩壊を招きかねないからでもある。富裕層の投資ポートフォリオに集中したマネーは、巨大ヘッジファンドの高度な取引操作にとらわれ、最も多くの人に恩恵を与える生産的な市場に流れなくなる。

もしかすると万事がうまく運び、誰もが豊かさを分かち合える世界を息子たちが受け継ぐこともあり得る。だがより恐ろしく陰鬱なのは、富裕な地主階級が困窮する大衆を支配していた、昔のヨーロッパの文明社会のようなアメリカになる可能性だ。

アメリカの活力も起業家精神も、そんな世界の前では萎えてしまう。われわれには軌道を修正する力がある――そして実際に修正した実績がある。