その財源を確保し、社会保障制度の持続可能性を確保していくためには、社会保険料あるいは公費負担を増やす、すなわち国民負担率を一段と引き上げていく必要がある。

逆に、国民負担率のこれ以上の引き上げを望まないのであれば、年金支給額の引き下げ、医療・介護サービスの圧縮など、社会保障給付を削減する必要がある。実際には、両者の最適な組み合わせを模索していかなければいけない。

国民負担率は何%が望ましいか

望ましい国民負担率は、産業構造や高齢化率、国民性等によって変わってくる。2015年の国民負担率を国際比較すると、33%の米国から50%前後のイギリス・ドイツ、67%のフランスなど、千差万別だ(図表2)。

米国のように、負担率が低ければ、経済活性化には資するものの、公的サポートが手薄になり、弱者切り捨て的な社会になっていく。

逆に、フランスのように負担率が高ければ、安心を手に入れられるが、高負担のもとで経済活力は弱まっていく。米国とフランスの間に望ましい水準があることは間違いなかろう。

ちなみに、わが国においては、財政赤字を加味した潜在的な国民負担率が50%を超えたのは、リーマン・ショック後の深刻な景気悪化に見舞われた2009年度、東日本大震災に見舞われ大規模な支援策が不可欠になった2011年度、2012年度に限られる。やはり、安定的な景気拡大を図っていくためには、当面は同負担率を50%程度までに抑え、その範囲内に収まるよう、社会保障制度の改革を進めていくというのが望ましい姿ではないか。