今年10月に消費税率が8%から10%に上がる。しかしわが国の社会保障制度を維持するにはまだ足りない。日本総研の牧田健調査部長は「少なくとも15%程度までは引き上げる必要があるが、今回のように一気に引き上げると景気を悪化させる。引き上げるなら毎年0.5%ずつ小刻みに行うべきだ」と提言する――。

急増する社会保障費2040年度には190兆円に

安倍政権は本年10月に消費を8%から10%に引き上げる予定である。しかし、財政健全化への道筋はいまだみえていない。わが国の財政赤字拡大の根本的な要因が、高齢化に伴う社会保障における受益と負担のバランス失調にあるにもかかわらず、財源確保と費用抑制に向けた抜本的な制度改革に手を付けず、むしろ、景気失速への警戒から大規模な消費増税の影響緩和策を打ち出しているからだ。

財政赤字と社会保障の関係をみるために、まず、わが国の社会保障制度を財源の観点から整理してみる。社会保障は通常、社会保険(医療・年金・介護保険・雇用保険等)、公的扶助(生活保護)、公衆衛生(保健活動)、社会福祉(子育て支援等)の4分野を指す。このうち、最初の社会保険以外は、公費を財源としている。一方、社会保険については、原則保険料を財源としつつも、一部には公費、すなわち国あるいは地方からの税金が投入されている。

年金については、全国民を対象とする基礎年金が公費と保険料の折半(公費負担2分の1)となっており、医療では国民健康保険と後期高齢者医療保険がともに公費負担が2分の1、介護保険も公費負担が2分の1となっている。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2016年度の社会保障総額は給付費に管理費などを合わせ135兆円。その財源は、社会保険料が69兆円(51%)、公費負担が48兆円(35%)、資産運用等のその他収入が18兆円(13%)となっている。このうち、公費負担分については十分な財源の手当てがなされておらず、他の歳出とあわせ、将来世代への借金、すなわち国債の発行でしのいでいるのが実情だ。

結果として、2016年度におけるわが国の国民負担率(対国民所得)は、社会保障の公費負担を含めた租税負担率が25.1%、社会保障負担が17.7%、計42.8%となっており、これに財政赤字分6.3%を加えた49.1%が潜在的な国民負担率とされている。

一方、支出に当たる社会保障給付費は先行き大幅な増加が避けられない。社会保障給付費のうち、高齢者向けが多い年金・医療・介護が概ね8割を占めている。したがって、高齢化が進めば進むほど、社会保障給付費は経済成長を上回るペースで増大していく。政府も、高齢者人口がピークに近づく2040年度には188兆~190兆円まで膨れ上がると試算している(図表1)。