だから、ただ単に知識を暗記していてもダメで、その知識をどのように応用し、自分なりの答えを導くかということが求められます。基礎知識から発想力を使い、読み解いていく問題が多いのです。京大の受験で重要になるのが、深い知識です。先ほども言いましたが、単に単語を暗記していただけでは、それを応用することができません。

現在、私が運営している学習塾「粂原学園」では、英語を指導する際、東大を受ける人と京大を受ける人では、指導内容を大きく変えています。たとえば、英語をゆっくり読んで理解できるようにする「精読」段階から、「速読」へ移行するわけですが、京大志望の生徒には速読はほとんどやらせません。東大であれば、ある程度精読を終えたら、速読重視の勉強をしてもらっています。

読書も「狭く、深く」になっていく理由

また、読書においては、たとえ狭く深く読んでいくのが大事だと言っても、当然のことながら最初は入門書から読んでいきます。

粂原圭太郎『偏差値95、京大首席合格者が教える「京大読書術」』(KADOKAWA)

入門書を広く浅く読んでいく中で、自分の中に引っかかるもの、気になるものがあれば、そこで終わりにせず突き詰めていくのです。このような性質が、京大生の多くに共通している性質だと思います。

一旦気になるジャンルを見つけたら、徹底的に調べていきます。1冊にとどまらず類書を読んでいくと、今まで平面的にしか見えていなかったものが、段々と立体化されてくるのです。ここで「浅い知識」から「深い知識」へと変化していきます。

広く浅く知識を習得してくことも非常に重要です。しかしそれぞれの分野で基礎的な知識しかなければ、意見も紋切り型になってしまい、面白い発想も生まれにくくなります。友人同士で話すにはいいですが、専門家と話す時は、浅い知識だとやはりついていけません。

また、深くコアな部分を知ることで、奇抜で面白い発想が生まれることもあります。人にもよりますが、こちらが奇抜な発想をすれば、相手もさらに面白い発想で返してくれることもあるでしょう。狭く深い知識を持っていると、場を盛り上げられることもあります。

「リンカーン演説」を暗記していたインパクト

以前、『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』(日本テレビ)というクイズ番組に出演したときのことです。

クイズが得意な人の中には、リンカーンの演説の一部分を覚えている人はいます。しかし私は、リンカーンの演説を一言一句全て覚えていました。ちょうど演説の冒頭部分を問われる問題が出て、僕が最初の長い一文を全部暗唱したのです。すると、スタジオが沸き、注目を浴びることができました。これがキャッチーだったようで、今でも「リンカーンの演説がすごかったですね」と言っていただけることがあります。

実をとろうとばかりすれば、リンカーンの演説の全文暗記など、一見無意味に思うことでしょう(実際は、一つのつながった文章からさまざまな表現を、自分が使えるレベルに落とし込むことができるという点で、演説の暗記は効果的な英語勉強法です)。

しかし、人を驚かせたい、楽しませたいという気持ちから得た知識は、いつかきっと役に立つはずと信じているのです。