「かかりつけ薬剤師」に親の服薬管理を
高齢になると、薬の処方に関するトラブルも多い。「2017年社会医療診療行為別統計の概況」によると、院外処方では75歳以上の24.5%が7種類以上の薬剤を投与されており、薬の副作用とみられるふらつき、認知機能の低下などが報告されている。高齢の親の薬の処方に不安のある場合は、「かかりつけ薬剤師」に服薬管理をしてもらうといい。
かかりつけ薬剤師を指名すると、残薬のチェック、後発医薬品の情報提供などに加えて、継続的に患者の服薬状況を把握し、24時間いつでも相談にのってくれる。医師に処方内容の確認・提案もしてくれるので、問題の多い多剤投与を減らせる可能性がある。
75歳以上で1割負担の場合、服薬指導の料金が、通常よりも1回あたり30円高くなるが、不要な薬を減らせれば、その分、医療費は安くなる。
「ジェネリック医薬品を使用する場合、いきなり切り替えるのが不安なら『後発医薬品分割調剤』で短期間試してみる手もあります。調剤に関する患者負担は分割しない場合より増えますが、薬剤料は割安となります。慢性疾患など長期間服用するような薬の場合は、薬剤師に相談してみましょう」(黒田さん)
このほか、高齢になるとインフルエンザや肺炎球菌のワクチン助成、健康診断の補助などを地方自治体が行っている。市町村からのお知らせには医療費を削減できる情報が載っていることが多いので、必ず目を通すようにしよう。
介護で仕事を辞めると「共倒れ」の危険も
では、介護費はどのように考えるのが正解なのか。介護に詳しいジャーナリストのおちとよこさんは、「節約しようとして、子ども自ら親の介護をするのは因小失大、避けてほしい」という。
「介護費用の節約のために、子どもが仕事を辞めたり、休んで介護を抱えると、子どもの生活が立ちゆかなくなり、共倒れする例をたくさん見てきました。子どもは介護環境を整えるマネジメント役に徹しましょう」
介護費も医療費同様に、介護保険をはじめとした公的保障を余すことなく使うことがポイントだが、おちさんは「介護保険の利用は、消費者としての目も必要」という。
「介護保険はすべて契約ですから、利用者は消費者として自分のニーズを伝え、必要な情報が提供され、選ぶ権利があります。無駄なくサービスを受けるためには、提供されるサービスを黙って受けていてはダメ。サービスを吟味する目を持つことです」(おちさん)
介護保険は、要介護度に応じて使えるサービスの限度額が決まっており、要支援1・2、要介護1~5の利用者は、実際に使ったサービス料金の1~3割を所得に応じて自己負担する。介護保険は、もともと保険内サービスと保険外サービスを同時に使う「混合介護」が認められている。保険の適用範囲を超えても、全額自己負担すれば好きなだけサービスを使うことは可能だ。ただし、介護保険が使える範囲内はケアプラン(介護サービスの計画書)が必要となる。