年収は変わりそうにない

労働条件も、民間企業よりは良いとはいえ、決して満足いくものではない。

入職した当時は、基本給が14万~15万円で、毎年3000円のベースアップ。一時金や退職金の制度もあった。のちに賃金体系が変わると、臨時・非常勤の基本給はスタートが17万円となった代わりに昇給がなくなり、一時金も退職金もなくなった。結局、トータルの年収は変わらない。募集の際に、みかけの賃金が高く見えるようにするための変更だったに過ぎず、何年働いても労働条件は良くならない。

働き始めてから10年以上が経過しても、基本給は17万円に留まっていた。健一さんは「夜勤で稼ぐしかない。体力のあるうちはできるだけ夜勤に入りたい」と、なるべく夜勤のシフトに入る。夜勤は二交代制で、16時30分から翌朝9時まで。夜勤手当と残業代を入れても、月給は23万円程度で、手取りは17万円ほどだ。

臨時・非常勤職員は、待遇で正職員と差がつくことが多い。忌引きと産前産後休業以外は、不利な条件だ。交通費は車通勤のため自宅からの距離で計算されるが、4~6キロメートルだと正社員は5900円だが、臨時・非常勤だと4000円だった。20キロメートル以上だとそれぞれ2万1700円と1万2000円となる。共済は正職員が加入できるが、非正規は加入できない。

60歳まで非正規

正職員であっても、介護職や看護師は続々と辞めていく。それだけ仕事がきついということだ。健一さんは、介護の仕事ならばどこでも転職できると考えていた。しかし、介護福祉士の資格をとり、看護師の女性と職場結婚し、子どもが生まれてからは意識が変わった。

「腰を据えな、あかんな。この仕事はやりがいがある。体を痛めない限りは同じ職場で続けたい」

病院側からは、「雇い止めはない」と口頭で言われており、希望すれば少なくとも60歳まで働けることになっている。実際、60歳を過ぎても働き続けている非正規の介護士や栄養士がいる。

正職員になるには、一般公募の試験を受けることになるが、学生と同じように一般教養の試験も受けなければならず、夜勤もこなして、子育てしながらの勉強は無理がある。以前は30歳までの年齢制限があったが、最近では45歳までに引き上げられた。

かといって、募集人数は若干名。4人程度の狭き門だ。たとえ合格して正職員になったとしても、臨時職員時代のキャリアは前歴に換算されず、賃金は1年目からのスタートとなる。人手不足の介護職が大事にされない理不尽さを感じている。