「分裂」「泥仕合」という言葉しか見当たらない
この「分断劇」をもう少し詳しく書いておきたい。自由党はこれまで、参院で社民党とともに「希望の会」という会派を組んできた。自由党所属が4人、社民党所属が2人の計6人で構成する小さな会派だ。その6人のうち4人の自由党所属議員が抜けて国民民主党と組み、残された2人の社民党議員が立憲民主党と組んだ。形状をみれば「分裂」「泥仕合」という言葉しか見当たらない。
衆院では立憲民主党が野党第1党だが、参院は国民民主党と張り合っている。今回の離合集散は参院での主導権を争う多数派工作だ。小沢氏が言うように「大きな野党結集の第一歩となる」とはとても思えない。実際、国会召集を前に野党の2つの勢力は参院の野党第1会派を激しく争っている。
ここで小沢氏の戦略を考えておきたい。彼が安倍自民党に代わる野党の塊をつくろうと考えていることは間違いない。そして、自分がその中核として政治的影響力を発揮しようと考えているのも間違いない。
小沢氏の手法は、いつも同じだ。国民的人気を呼びそうな「旬」の政治家に接近して、その人気に乗って選挙で勝ち、権力を得ようというもの。成功した時も失敗した時もあるが、秋波を受ける対象となったのは細川護熙氏、羽田孜氏、海部俊樹氏、渡辺美智雄氏、鳩山由紀夫氏、小池百合子東京都知事ら、数え上げたらきりがない。2017年の衆院選の後は枝野氏にご執心だった。
枝野氏は理念なき「野合」には消極的
だが枝野氏は理念なき団結には消極的だ。与党側から「野合」と批判されるのを恐れているからだが「政策なんぞ、後からついてくる」が持論の小沢氏としてはもどかしい。もともと枝野氏は20数年の政治生活の大部分を「小沢氏批判の急先鋒」として生きていたという経緯もある。最近、2人の関係が微妙になってきた印象は否めない。
小沢氏はここで方向転換する。自由党は今のままでは所属議員数人の小政党にすぎない。それでは小沢氏といえども影響力を発揮するのは限定的だ。そこで一定の規模を持つ国民民主党とくっつき、立憲民主党と伍する数を得てから枝野氏を再度口説くという二段構えをとることにしたのだろう。
小沢氏は、この2段階論をとることがしばしばある。2017年の衆院選前には野党第1党の民進党と社民党で合併したうえで、「都民ファーストの会」を率い飛ぶ鳥を落とす勢いだった小池東京都知事と交渉することを考えていた。このあたりのことは当時書いた「老いた豪腕小沢氏が描く『小池総理』の夢 75歳が最後に狙う『2段階論』」を参照願いたい。
玉木氏は小沢氏が民主党幹事長として絶大な勢力を持っていた時の1回生。小沢氏にとってくみしやすい相手。国民民主党は支持率は1%程度に低迷してはいるが衆参あわせて60人近い議員数を持つ。