▼ベテラン女医が見た、イマドキの女医
「ゆるふわ女医」台頭に揺らぐ医療界
「女性医師が担当する患者は死亡率が低い」といった医学論文が発表され話題になっているが、「だからといって、すべての女医が優秀であるわけではない」と、フリーランス麻酔科医の筒井冨美氏は語る。
近年の医学部入試の過熱ぶりや、「リケジョ」こと理系女性ブームもあり、女子医学生や女医が増えています。同性の医師が増えることは大いに歓迎しますが、「壁」にぶつかる女医も少なくありません。
いわゆる臨床研修医制度が始まったのは2004年のこと。医師国家試験に合格した新人医師は2年間、特定の科に属さず「内科4カ月→精神科2カ月→小児科2カ月……」と2年間で多数の診療科で研修することが義務付けられました。そして18年4月からは新専門医制度が始まり、研修を済ませた若手医師は内科・小児科・眼科などの19の専攻のうち1つを選んで3~6年間の専門研修を行い、「眼科専門医」など専門医資格を取得できるようになったのです。
「自分はどの診療科のプロであるか」を示すことができるわけですが、現状、女医は眼科・皮膚科など「マイナー科」と呼ばれる「軽症で急変の少ない患者が主で、定時帰宅しやすい」専攻を選ぶケースが多いようです。
そうしたマイナー科を選ぶ医師はレベルが低いわけではありません。その判断には女性ならではの、出産という人生の契機が関連しています。「35歳までに2、3人子供を産みたい」と考えれば、最初の出産は30歳前後にならざるをえず、それまでに専門医資格を取得できる科となれば、そういう専攻が増えるのは自然な流れだと言えます。
ただ、「ゆるふわ女医」と呼ばれる存在の台頭はいささか残念です。ゆるふわ女医とは「医師免許は取るけどキツい仕事はしたくない。医師など高収入な夫と結婚するまでは腰掛け程度に働くけれど、結婚・出産後は時短かパート勤務のみで、手術・救急・当直・地方勤務は一切いたしません」というタイプ。
大学病院や公立病院のような大病院で、産休・育休・時短のような福利厚生をフル活用して、昼間のローリスク業務のみ担当したがる人々です。結婚・出産後に早々に引退して専業主婦になってしまうケースも見られます。「ゆるふわ女医」の増加は医療界の大きな悩みの種。こうした女医が増加している点が、多くの医大が入試で「女性受験者減点」に踏み切らざるをえない一因ではないかと私は考えています。