女医は月イチの「生理で体調に波」は本当なのか
厚生労働省の調べ(16年)では、現在、医師の総数は約30万人。その5分の1、約6万人が女性医師だ。絶対数としては少数派だが、女性医師の割合は年々増している。このことを桑満氏は「歓迎する」と話す。
「女性医師は生理になるとイライラして、体調が悪くなったり冷静な判断ができなくなったりするのではないか、という意見もありますが、多くの女性医師は服薬するなどして心身のコントロールが可能です。一方、男性医師はどうでしょうか。例えば、アルコール依存症の傾向がある男性医師がいます。依存症ではなくても、二日酔いで勤務する男性医師も実在します。さらに、たばこを吸う男性医師も少なくない。女性医師が、ほろ酔い状態やニコチン依存症の男性医師に劣るとは思えません」
桑満氏によれば、医療用ハサミやピンセットなど外科の手術器具は男性の手のサイズに合わせて作られることが多いという。そのため器具を使うときに力が必要になる可能性はあるが、器具を自分仕様にオーダーメードすることもできるので大きな問題ではないという。
そもそも、近年では医師が1人で手術の方針を決め、執刀することはなく「チーム医療」が基本なので、「女医は嫌だ、心配だ」というのはナンセンスなものだ、とも桑満氏は語る。
診療科別の医師の男女比を見ると、外科など女性医師の割合が極端に少ない科もあるが、これまで見てきた調査の結果から言えば、今後その「偏り」も改善されていく可能性は高く、「女性医師は嫌だ」から、「女性医師に診てほしい」という声が主流となる時代もやってくるかもしれない。
なお、男性医師・女性医師の対比ではないが、前出・津川氏の研究では、内科医の場合、年配の医師よりも若い医師が治療したほうが患者の死亡率が低いという結果が出た。一方、外科医の場合、年配の医師より若い医師が手術した患者のほうが死亡率は高かった。
「内科医は医学の進歩の速度が速く、経験の集積よりも影響力が大きく、外科医は経験の集積の影響が大きいと考えられます」(津川氏)