内科疾患は、女医が診ると患者は“長生き”

では、「現実」はどうなのか。

より優れているのは、男性医師か、女性医師か。医師の性別をめぐる「患者の本音・感情」ではなく、客観的に見ていこう。

カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授の津川友介氏(医療政策学者・医師)を中心としたチームは2018年4月、英国医師会雑誌(BMJ)に論文を掲載した。要旨は次のようなものだ。

アメリカの約4.5万人の外科医が行った手術のデータを用いて、外科医の性別によって患者の術後死亡率(術後30日以内に死亡、もしくは1度も退院することなく死亡する確率)が変わるかどうか解析した。

すると、女性の外科医の場合、死亡率は6.3%、男性の外科医の死亡率は6.5%であり、統計的な有意差は認められなかった。つまり外科医の性別で患者の死亡率には差はなかったということだ。17年にはカナダのデータでも同様の研究が行われており、似た結果が得られている。

内科医に関しても津川氏らは研究し、16年に論文として発表している。

内科疾患の患者が入院して30日以内に死亡する確率を担当が男性医師と女性医師の場合で比較した。

結果は、女性医師11.1%、男性医師11.5%。こちらは女性医師の患者の死亡率のほうが統計的に有意に低いことが明らかになった。

なぜ、女性の内科医のほうが患者を結果的に「長生き」に導くことができるのか。津川氏はこう分析する。

「女性医師のほうが男性医師よりも、エビデンスに基づいた医療を選択したり、患者中心のコミュニケーションを取る(長い時間をかけてじっくりと患者から十分な情報収集)傾向があることが複数の研究で明らかになっています。このような医師としての“診療スタイル”によって、女性医師の患者の死亡率が低くなった可能性があります。日本での研究はまだ行われていないため、同じ結果が得られるかどうかはわかりませんが、同様の結果が得られる可能性はあると思われます」