各国の自動車には「その国の生き方」が反映される

各国の自動車には、その国における人々の生き方が色濃く反映されてきた。ドイツでは、速度無制限区域のある高速道路である“アウトバーン”を高速かつ安全に移動することなどを目的に、堅牢かつ重厚な自動車構造が重視された。

ドイツなどでタクシーに乗ると車種はメルセデス・ベンツであることが多い。社内に入って気付くのは、ドアなどの鉄板が厚いこと、エンジン排気量が大きく加速性に優れていることだ。そのため、世界の政治家、エグゼクティブの移動には、ベンツが選ばれることが多い。

また、スウェーデンのボルボも、安全性と車体の頑丈さには定評がある。その理由は、寒冷地でヘラジカと衝突しても走り続けることができることが重視されたからだ。それが、衝突時のショック吸収性能や自動ブレーキの開発につながってきた。

なぜ農家には必ず「軽トラ」があるのか

わが国の自動車設計にも、人々の生き方が反映されてきた。それが、軽自動車の誕生につながった。

わが国の国土は狭い。そのため、道幅も狭い。山間部には急峻な地形が多く、自動車には十分な登坂能力が求められる。資源の調達・確保に関しても、わが国は多くの化石燃料を海外からの輸入に依存している。地方では、兼業で農業に携わる家計も多い。

わが国での人々の生活を考えると、大排気量かつ大型の自動車を日常的に用いることは現実的ではない。農村や漁村では、細い道にも問題なく入っていける小型の自動車のほうが運転しやすい。必ずと言っていいほど農家に“軽トラ”があるのは、そうした文化の表れに他ならない。

また、地方に住む知人と話をしていると、自動車が一家に一台ではなく、一人に一台の時代になっていることがわかる。少子化と高齢化、および人口の減少が進む中で、鉄道やバスの運行本数が減少してきたことは大きい。個人の通勤や買い物などに、軽自動車は欠かせない存在になっている。

家計の収入状況などを考えても、大型乗用車を複数台購入することに比べれば、軽乗用車を必要な台数購入したほうが維持にかかる費用も抑えられ現実的だ。