これからの中国市場で「電気自動車」が重視されるワケ

今後の自動車業界の展開を考えると、中国の自動車産業の動向が重要である。2017年、中国の新車販売台数は2800万台を超えた。中国は、世界最大の自動車販売市場だ。トヨタ、独フォルクスワーゲンなど、世界の自動車企業にとって、中国の需要を取り込むことが成長を左右する。

中国の自動車の設計思想は、世界の自動車業界に無視できない影響を与える。中国で深刻化している問題に、大気汚染がある。中国政府は大気汚染対策のために、レシプロエンジンを搭載した自動車ではなく、電気自動車(EV)の普及を重視している。

その理由は、ガソリンエンジンなどよりもエネルギー効率の良いモーターを用いることや、再生可能エネルギーを用いた発電により、温室効果ガスの排出を減らすことができるからだ。中国での需要を取り込むために、世界の自動車企業がEV開発に注力しているのである。

今後、世界の自動車業界における中国市場の存在感は一段と増していくだろう。2024年には、インドの人口が中国を上回ると予想されている。人口増加に伴い、インドのモータリゼーションも加速化するだろう。自動車の生産地・需要源としての中印の存在感が高まるにつれ、自動車設計の思想にはその国の文化がより反映されていくだろう。

その中でわが国の自動車企業は、燃費や居住性能、耐久性などの基本的な強みを生かしつつ、各国の事情に合ったデザインや車種を創造していくことが求められる。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
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