石油ポリタンク 東日本は赤、西日本は青
ほかにも、フォッサマグナ近くでわかれる東西文化の違いとして、石油ポリタンクの色がそう。東日本では赤、西日本は青が多く売られている。
人をけなす言葉「バカ」「アホ」の分岐点は、東と西(あるいは名古屋の「たわけ」など)でわかれるが、こちらは朝日放送の番組の企画から生まれた書籍『全国アホバカ分布考』(松本修、太田出版)に詳しい。
地質学における東西の境界と、地域風俗の違いとの因果関係はないようにも思える。しかし、人々の暮らし(ムラ社会)は山や川、平野などの「地形」が基盤になっている。糸魚川静岡構造線の西側には日本アルプスがそびえており、山脈の東と西で習俗が分かれてしまう、という見方にはある程度、合点がいく。
糸魚川静岡構造線上にある長野県松本市に住んでいる知り合いの住職に聞いたところ、「雑煮はすまし汁に角餅」(東日本の要素)、「ポリタンクは赤」(東)、「バカ」(東)、「NTTは東日本」(東)、「周波数は60ヘルツ」(西日本の要素)という回答が返ってきた。松本は東日本の文化風土のようだ。
葬送のしきたりもフォッサマグナでわかれる
葬送のしきたりの多くもまた、フォッサマグナあたりでわかれる。
まず、葬式後の初七日から百か日法要の数え方が、東と西では異なる。たとえば東日本では死亡日を含んで7日目が初七日になる(松本もこれに該当する)。西日本の初七日の考え方は、死亡日の前日から数えて7日目となる。東日本と西日本では、法要の日が1日ずれるのである。
さらに、僧侶の世界では「袈裟(けさ)の着用」が東西で異なる。私が所属する浄土宗の場合、日常的に着用する道衣に「改良服」というものがある。
改良服につける袈裟の種類が、東日本と西日本とで異なっているのだ。東日本の僧侶の多くは輪袈裟(伝道袈裟)という輪状に折りたたんだ袈裟を用いるが、西日本の僧侶は前掛けのような袈裟「威儀細」を好んで用いる。僧侶個人の好みもあり、必ずしも東西で厳密に分かれるものではないが、私は東京生活が長かった(芝の増上寺で修行を終えた)ため、京都在住の僧侶ではあるが輪袈裟派である。