子育てに活かしたい「漱石の教え」

以上のように、かの文豪・夏目漱石は、親からあまり手をかけてもらえない子ども時代をすごしました。孤独にも思える漱石の幼少時代、彼を救ったのは仲間たちでした。多感な17、18歳のとき、漱石はバンカラな友人たちとつるむことで、心が癒された。当時の多感な彼の心を支えたのは、家族ではなく友人たちだったのです。

「親の愛」に飢えていた漱石の場合、友人たちとの交流で、そのさびしさをまぎらわしていたわけですが、子どもにとって「親と楽しくすごす時間」はとても大切です。

親御さんの中には、仕事でひたすら忙しく、子どもと接する時間がなさすぎるという方もおられると思います。生活をかけ、必死に仕事に取り組んでいるから子どもと遊ぶ時間なんてなかなか取れない、そんな親御さんもいらっしゃるでしょう。

また、いまは女性も仕事をバリバリやって当たり前の時代。お母さん方も、子どもと接する時間があまり持てないということも少なくないはずです。

1日30分でいいから子どもと2人きりになる

そんなケースに出合ったとき、教育カウンセラーである私は、「1日30分でもいいので、子どもと2人きりになる時間をつくってください」と親御さんにお願いすることがよくあります。

夏目漱石の生い立ちから私たちが学び取れる「子育てのポイント」は、親と子のふれあいが、子どもの豊かな心を育む“基礎”になるということ。漱石の場合、幸いにも友人たちとの交流が彼を救うことになったわけですが、子育て世代の親たるもの、どんな形でもいい、子どもと一緒にすごすことの大切さを、常に念頭におくことが大切なのです。

諸富祥彦
明治大学文学部教授
1963年、福岡県生まれ。教育学博士。日本トランスパーソナル学会会長。臨床心理士。上級教育カウンセラー。1992年、筑波大学大学院博士課程修了後、千葉大学教育学部助教授等を経て、現職。おもな著書は、『男の子の育て方』『女の子の育て方』『ひとりっ子の育て方』(以上、WAVE出版)、『子育ての教科書』(幻冬舎)など多数。[ホームページ]https://morotomi.net/
(写真=iStock.com)
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