いまも睡眠障害と貧血で、週1回は全く動けない

高3になった頃、英語の偏差値は50に遠く及ばなかったという。そこから週5日間予備校に通った。朝10時には自習室にいて、90分の講義とあわせて1日10時間は勉強した。具合が悪くて寝込んでいる日もあったが、体調と相談しながら勉強を続けた。

入試直前になると、英語の偏差値は58まで上がった。国語の現代文の偏差値は65。それでも合格の安全圏内には入っていなかったが「このままでは終わりたくない」と諦めなかった。その結果、早稲田、明治、法政の3大学の合格をつかみ取ることができたのだ。

「高3の時も、体調はボロボロでした。睡眠障害の治療も、予備校に通うことも、父親が援助してくれたことで可能になりました。学校に対する意地もありましたし、結果を出せたことはよかったと思います」

しかし大学合格によって体調がよくなったわけではない。Aさんはいまも睡眠障害と貧血で、週1回は全く動けない日がある。病気との闘いは続いているのだ。

学年主任は「大人が謝る教育的意味」を教えたかった

Aさん親子と世田谷学園の代理人弁護士が11月19日に面会した際、学園側の弁護士は、Aさんが精神的苦痛を受けた根幹の部分について、真っ向から否定している。

「離婚家庭の子どもだからダメなんだ」と担任が言ったことについて、学園側の言い分は次のようなものだった。

「少なくとも、家庭のプライバシーに踏み込んでの発言はしていない。一般論としては述べたかもしれないが」

これに対してAさん親子の弁護士は「両親が離婚しているAさんに離婚の話をすれば、それがAさんのことを言っているのは当然です。それを一般論などと言って逃れようとすることは非常識」と反論している。

また、学年主任が担任の謝罪を制したことについて、学園側は「学年主任は大人が謝る教育的意味を教えたかったし、Aさんがその後どうしたいのかを聞きたかった。担任の謝罪を制止することが目的ではなかった」と主張。

この発言についてAさん親子の弁護士は「悪かったと謝罪をする前に、お前は意味がわかっているのかとか、謝罪した後どうするのと聞くのは、謝罪ではありません。そんな教育はないでしょう」と辛辣に批判している。

2度にわたる転校勧奨も、学園側は「転校を勧めたことはない。過去のケースを説明し、親御さんにどうしますかと話しただけ」と否定するが、転校以外の選択肢を示していないのだから、結局は転校勧奨と言えるのではないだろうか。