改葬の場合も、先祖の遺骨をすべて引っ越すのは難しいため、祖父母の世代までの遺骨だけを引っ越し、それ以前の遺骨は永代供養墓に移すケースが多いという。今ある墓を更地にしてお寺に返し、先祖代々のお骨(複数)を永代供養した場合の費用は約300万~1000万円になる。

最も避けるべきは、墓の管理者との連絡を怠ること。転勤などで引っ越ししたまま手続きを忘れていると、寺や霊園から墓守に連絡する手段がなくなる。管理費を滞納すれば、後でまとめて請求されることもあるし、最悪の場合、墓が撤去されてしまい「無縁仏」になる可能性もある。

「無縁仏とは、『祭祀承継者』がいないということです。霊園の場合、管理料を3年以上滞納していると無縁仏扱いされ複数の家族を同じ墓で葬る『合祀』などで整理されてしまうことが多い。お寺の場合には3年と限らず、数十年放置された後に無縁仏になる場合もあります」

管理料を払いたくないため確信犯的に連絡を絶つ人もいるが、先祖が草葉の陰で怒っているのではと心配になり、後悔するケースが後を絶たないという。

一方で「墓守」として注意しなければいけないのは、寺や霊園の経営状態だ。資金難によって運営が継続できなくなる場合もあるという。寺の場合、運営が難しくなれば、同じ宗派の別の寺がその墓地も合わせて管理するようになり、基本的に影響はない。公営の霊園も破たんリスクは少ないだろう。問題は民間企業が運営する霊園だ。

「今のところ事例はありませんが、今後、霊園の破たんは大きな問題になる可能性がありますね」

とくに都会で重宝されているマンション型の墓地の場合、寺は名義を貸しているだけで、実際の運営は民間に委ねている場合が多い。経営が悪化し、運営会社が破たんすれば、遺骨の行き場がなくなる可能性もある。

佐々木悦子
エンディングコンサルタント
一般社団法人日本エンディングサポート協会理事長。証券会社などを経て、2012年10月より現職。著書に『お墓・仏壇の選び方・祀り方』など。