「感想」は受け身から脱け出す第一歩

「感想」をはじめとしたアウトプットのもうひとつの効果は、「受け身からの脱却」です。

西岡壱誠(著)『東大生の本棚 「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方』(日本能率協会マネジメントセンター)

本を読んでいると、どうしても「受動的」になってしまいがちです。書いてある内容をそのまま呑み込み、疑うこともなく淡々と読み進めてしまう。“事実らしきもの”として書かれていることを「へえ、そういうこともあるのか」と、なんとなく情報としてしか処理しないことが多いわけです。

でも、残念ながら、それはあまり効果的な読み方とは言えません。受け身の読み方では、記憶に残らないからです。

淡々と読み進めるのではなく、「これって本当なのか?」「たしかにそうだ!」「これはすごいな!」など、内容を自分の中で噛み砕いて、「情報」を「知識」に変換することをしなければ、受け身の読書から脱け出すことはできません。

そんな受け身から脱却する一歩となるのが「感想」なのです。

本に対して思ったこと、考えたことを言葉にして、他人に言える状態にするというのは、内容を自分で噛み砕く「能動的な」行為です。「後から感想を言おう」と考えるだけで、「もっとちゃんと読まなければ!」と受動的な読書から脱却することにつながります。

本の感想を言う「場」をつくろう

「感想」を他人と共有し合うことには多大な効果があります。他人と感想を言い合うことが前提にあると、読みながらこんなことを思うのではないでしょうか。

このシーンについて、ぜひ解釈や感想を言い合いたい!
ここについて、あの人はどんな感想を抱くんだろう?

本を読む時に気になる点が多く現れてくるようになるのは、受け身の読書から記憶に残りやすい能動的な読書へと移行した証です。また、「口に出して誰かに聞いてもらう」「それに対してフィードバックしてもらえる」というのは、なかなか楽しい経験です。「感想」を言い合うこと自体が楽しい行為だからこそ、記憶にも残りやすいわけです。

僕がオススメしたいのは、本をコミュニケーションの題材のひとつにすること。友だちや家族と、感想を共有し合えるような本をみんなで読んで、その本について語り合ってみてはいかがでしょうか?

多くの東大生が、そういう「本の感想を言い合う場」が中高時代にあって本当に良かったと語っていました。みなさんもぜひ、本を題材に家族や友だちと語り合ってみてください!

西岡壱誠(にしおか いっせい)
現役東大生ライター
1996年生まれ。歴代東大合格者ゼロの無名校から東大受験を決意。2浪が決まった崖っぷちの状況で「『読む力』と『地頭力』を身につける読み方」を実践。東大模試全国第4位を獲得し、東大にも無事に合格した。現在は家庭教師として教え子に読み方をレクチャーする傍ら、学内書評誌「ひろば」の編集長を務める。著書に『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』『読むだけで点数が上がる!東大生が教えるずるいテスト術』など。
(写真=iStock.com)
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