【実践編】
夢は明るい未来へのシミュレーション
松田英子●東洋大学社会学部社会心理学科教授
眠っている間、人は誰でも夢を見ています。30~40代の男性でも、毎晩3~4つぐらいの夢を見ているもの。ただし、夢の記憶を思い出す頻度には個人差があります。一般的に「夢をよく見る人」と言われているのは、正確に言うと「夢をよく覚えている人」ということなのです。
覚えている夢の内容を調べてみると、圧倒的に多いのが悪い夢。これはあらゆる年代に共通していて、また、世界的に見ても共通です。私自身も幸せな夢の記憶は数少ないですし、みなさんも楽しい夢を見て目が覚めたという経験より、焦りや不安の夢を見て目が覚めた経験のほうが多いはずです。
なぜネガティブな夢のほうが記憶に残りやすいのかというと、感情の強度が強く、かつ、夢を見た直後に目が覚めることが多いから。悪夢にうなされてパッと目が覚めた場合には、夢を見ている途中で目を覚ますため、記憶に残りやすいのです。
面白いことに、夢の内容も世界的に共通しています。ドイツの調査によると、最も多いのは飛んでいる夢。次は何度も何度も繰り返して、なにかしようとする夢。それから、追いかけられる夢や、性的な夢、なにかに遅れてしまう夢。今、生きている人が死んでいる夢や、あるいは、亡くなった人が生きていて、夢の中で会っている夢。そのあたりは頻出するテーマです。
日本の大学生を対象とした調査では、追いかけられる夢が一番多い。2番目は落下する、3番目が遅刻、4番目は自分が攻撃や暴力を受ける、5番目は大切な人が亡くなる夢です。
男女差を見てみると、男性は性的な夢や、乗り物のコントロールができない、火事やトイレが見つからないといった夢が多いですね。あとは戦いに関する夢。高校生ぐらいだと、ゲームのような場面で障害をクリアしていくとか、なにかに追いかけられて殴られそうになったけど、やり返したといったものがあります。女性に多いのは、亡くなった人に会った夢など、対人的な相互作用を伴うものでしょうか。