一部の人だけが好み、富む政策を押し進めている

それにしても安倍首相はなぜ、出入国管理法案の成立をあれほど急いだのだろうか。

朝日社説は「来年4月の施行に向け、熟議よりも、48日間という短い会期内での成立にこだわった。審議を短縮するため、与党が質問時間を放棄する場面もあった」としか触れていないが、安倍首相を強く支持する一部の財界人らからの強い要望があったからだとわれている。

寛容さに欠ける安倍首相は、一部の人の声だけに耳を傾け、彼らが好み、そして富む政策を押し進める。その結果、大半の国民にとって実感のない“景気上昇”がもたらされているのが現状だ。

安倍政権は12月13日に、景気動向を検証する内閣府の研究会を開催し、2012年12月からスタートしたいまの景気回復が、高度経済成長期の57カ月続いた「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目の長さとなったと正式に発表している。これも驚きだ。内閣府の検証にどんなトリックやマジックが隠されているのか、公平な立場から専門家による分析が求められる。

「初めてうかがった。私は答えようがない」

さらに朝日社説は指摘する。

「広範にわたる課題を抱え、政府が全体として取り組むべきテーマであるのに、首相が前面に立つことはなく、答弁はほとんど法相任せだった」

そのうえでこう訴える。

「驚いたのが、3年間で技能実習生69人が凍死、溺死、自殺などで死亡したとする政府資料に対する見解を問われた時の首相の発言だ。『初めてうかがった。私は答えようがない』。外国人労働者を人として受け入れようという当たり前の感覚が欠落しているのではないか」

48日という短い会期内での成立にこだわるあまり、驚きの発言をする。沙鴎一歩も安倍首相のこの発言を聞いて耳を疑った。

外国人労働者の受け入れのための重要事項のほとんどは、法案ではなく、省令や指針に盛り込むというが、来年4に施行されてもどこまで法律が機能するか疑問であり、多くの外国人労働者を受け入れる国民のひとりとして不安である。