何にでも化けうるアマゾンの可能性

さて、最後はアマゾンだ。結論からいえば、今後「GAFA」で覇権を握るのは同社ではないかと私は考える。その理由は一番何にでも「化けうる」業態だからだ。

1994年に書籍のネット販売から始まった同社は、いまや売上高で世界最大手のウォルマートを猛追する企業に成長した。成長の秘訣は、「稼いだ利益を惜しげもなく使い、投資を続ける」こと。電子書籍Kindleや、AIスピーカーAmazon Echo、ドラマや映画など大量の映像コンテンツを楽しめるAmazon Prime Videoなど、奇抜な商品やサービスを次々と繰り出す一方で、膨大な商品を世界中に届けるため、陸海空すべてを網羅する一大物流システムも整えつつある。巨大になりすぎたイメージがあるが、アメリカの小売り全体におけるEコマース市場のシェアは約10%。まだまだ成長する余地が残されている。小売業・物流業・メディア業、IoT分野など、どんな分野に進出してもおかしくなく、可能性が無限に広がるのがアマゾンという企業の最大の強みといえるだろう。

18年9月末、ルノー、日産自動車、三菱自動車の3社連合がグーグルAndroidを車載システムに搭載することを発表した。自社開発OSに執着してきた自動車メーカーがついに世界シェア8割を超えるOSの採用に踏み切ったのだ。既存ビジネスと熾烈な争いを経たのち、「競合から協力へ」市場が態度を変えていく様は4社ともに経験している。強すぎる商品に対して「勝てない」と悟った段階で対抗から手を組む相手へと変化するものである。

だからこそ、仮に将来「GAFA」が失墜することがあるならば、それは新たな市場が登場し、彼らのビジネスが用なしになったときだけだ。アップルにとっての脅威はiPhoneを超える高機能スマホの登場ではなく、全く次元の異なるデバイスの登場でスマホ自体が不要になることなのだ。

ただ、いかんせんこの4社は巨人に成長している。新ビジネスを立ち上げ彼らに立ち向かうベンチャー企業が現れても、ことごとく買収、吸収するだけの力を蓄えている。その隙をつくには、彼らが「こんなものは売れない」と無防備になっている盲点をつくしかないだろう。いま、世界のどこかに存在する課題を解決する糸口を見つけること。まだ意識化もされず概念も名称さえもないが、大きなビジネスに発展していく何かを見つけ、新たな市場を創出すること。そこにのみ「GAFA」を超える道が隠されている。

小久保重信(こくぼ・しげのぶ)
ニューズフロント フェロー
1961年生まれ。翻訳者、同時通訳者を経て、日経BP社ウェブサイトで海外のIT関連記事を執筆。2000年にニューズフロントを設立し、代表取締役に就任。著書に『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社)。
(構成=三浦愛美 写真=iStock.com)
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