お金の情報は「知れば得する・知らないと損する」というものが多い。今回、6つのカテゴリごとに、そんな「耳より話」を集めた。第3回は「医療」について――。

※本稿は、「プレジデント」(2017年6月12日号)の掲載記事を再編集したものです。

▼「限度額適用認定証」の提示で払わなくていい額は21万円(※)

医療費の自己負担が多額になったとき、支払いは減らせる?

病気やケガをして医療機関を利用した場合、窓口ではかかった医療費の一部を自己負担する。70歳未満の人の自己負担割合は3割だ。少額なら負担は少なくてすむが、たとえば、入院や手術などをして医療費の総額が100万円になった場合、窓口での自己負担額は30万円に及ぶ。しかし、あるアイテムを入手しておけば、窓口での支払いを大幅に抑えることができる。それが「限度額適用認定証」だ。

健康保険には、家計に過度な負担を与えないために、患者が1カ月間(1日から末日まで)自己負担するお金に上限を設けた「高額療養費」という制度がある。70歳未満の人の限度額は所得に応じて5段階に分類されていて、たとえば、年収370万~770万円の人の限度額は、8万100円+(医療費の総額-26万7000円)×1%。医療費が100万円かかっても、自己負担は8万7430円ですむ。

ただし、医療機関では、健康保険証を見ただけでは限度額を判断できないため、以前はいったん3割全額を負担。後日高額療養費の申請をして還付を受ける必要があった。還付金が払い戻されるのは約3カ月後。がんや心臓疾患などで、毎月のように高額な医療費がかかる患者は資金繰りも大変だ。そこで、2007年に導入されたのが「限度額適用認定証」なのだ。患者の高額療養費の所得区分が、5段階のうちのどれにあたるのかを証明するもので、A6サイズが多い。これを医療機関の窓口で提示すると、先述の例では、30万円ではなく、高額療養費の限度額9万円弱を支払えばよくなる。つまり、限度額適用認定証があるかないかで、窓口での支払いに約21万円もの差が出る。持ち出しを少なくするために、ぜひとも覚えておきたい制度だ。

当初は入院時の医療費にしか使えなかったが、抗がん剤治療などで通院でも医療費が高額になるケースが増えてきたため、12年からは通院でも利用が認められている。

(※)1カ月分。70歳未満、年収370万~770万円の人で医療費に100万円がかかった場合。