夫婦で過ごす時間が増えるからこそ寝室の見直しを!

定年後の間取りは、次の2つの視点から考えるといいでしょう。第一に家事ストレスを減らすということ。第二に夫婦の距離感をほどよいものにするということです。

まず、年をとるほど体力がなくなってくるのですから、家事のしやすい間取りにする必要があります。「トイレ・洗面所・浴室」の項でも述べましたが、これらの水回り設備が家のなかでどのような位置にあるかによって、家事労働の大変さは変わってきます。床材を掃除しやすく汚れのつきにくいものにするという配慮も、家事ストレスを軽減するためには必要です。

次に夫婦の距離感です。よく定年後に夫が1日中家でゴロゴロしているのが妻には大きなストレスになると言います。それを防ぐためにもお互いに自分の定位置を決め、そこで好きなことをして過ごすのはいかがでしょうか。

子どもが独立してしまうと、部屋は余ります。子ども部屋だったところを書斎やアトリエなど、お互いの趣味の部屋に改造するのもいいでしょう。

そして、寝室についてきちんと考えることが定年後に夫婦が仲良くやっていくための秘訣です。家をリフォームする際、寝室の広さや構造まで見直す方は少数派です。しかし、新婚当時と定年を迎える頃とでは、夫婦のあり方も変わっているはずです。それなのに寝室だけは、現在の夫婦のかたちに相応しいとはいえないプランのままになっていることがよくあります。

間取りを決めるまでの手順
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間取りを決めるまでの手順

たとえば新婚当時からずっとダブルベッドで同じ部屋に寝ているという夫婦で、本当は寝る前にベッドで読書をしたいのに、電気がついているとまぶしくて眠れないと妻(または夫)から文句を言われるため、我慢しているというケース。また、夫は暑がりで妻は寒がりのため、夏は冷房の温度をめぐって一悶着が起きているというケース。いずれも些細なことですが、毎日のことが積み重なり、微妙にストレスが溜まっているという方が多いのです。

一方、「もう何年も寝室は別々です」という夫婦も少なくありません。子どもが小さいうちは、お母さんと子どもが一緒に寝ていて、お父さんは1人だけ和室に寝るということがあります。それ以来、完全に別室のまま30年が過ぎてしまった、というケースなどです。

新婚当時と同様ダブルベッドで寝ている場合も、寝室は別という場合も、ともに問題があります。定年を迎えたら、これから2人で快適に暮らすための寝室プランを考える必要があるでしょう。どんなプランになるかは夫婦によって違うはずですが、私は「ほどよい距離感を持った寝室」をつくることをおすすめしています。

たとえば大きめのワンルームに2つのシングルベッドを置き、その間に間仕切りのような扉を設けておきます。普段はフルオープンになっているものの、お互い好きなテレビを見たいときや読書をしたいときには間の扉を閉める。喧嘩をしているときも閉めればいいのです。

プライバシーを保つことができて、それでもお互いの気配をうかがい知ることができるような寝室のプラン。夫婦で過ごす時間が増えるからこそ、寝るときまでべったり一緒である必要はないのです。

(構成=長山清子)