2035年には160万人を超えると予想

したがって、都市機能の割に人口が少なかった街に「特区」や「インバウンドビジネス」など、国策レベルでの後押しが入り、国内のみならず国外からも人気がでてきたというのが福岡市の人口増の支配的な要因だと思われる。

福岡市総務企画局の推計では人口は微増し続け、2035年、福岡市の人口は160万人を超えると予想されている。それでも200万人には届かないので、東京のように混雑することはないだろう。

ともあれ福岡は、大きな自然災害やミサイルが飛んでくるようなことが起こらない限り、あと約20年は人口増ボーナスの恩恵を受け、プレミア感が増していく都市であることは間違いないといえる。

日本全体では人口減となっている。ここ20年の福岡の活躍と伸びしろは、自県のみならず「日本を救う一翼を担う」といっても暴論ではないかもしれない。

どこからでも中心部へ1時間

また、福岡と東京と海外をトライアングルで行き来する筆者には、人口増のデータだけではなく、もっとハッキリみえてくることがある。

福岡市は、博多区、中央区、東区、西区、南区、城南区、早良区と合計「7区」で構成されており、さらにこの周辺に大野城市、春日市、那珂川市、筑紫野市など住み心地と利便性を兼ね備えたベッドタウンが点在する。

福岡市内の中心部へは、これらどこからでもタクシーなどクルマはもちろん、公共交通機関を使えば「ほぼ1時間以内」で到着できる。それゆえに、東京だと1時間半くらいなら通勤圏内だが、福岡の場合は「よくぞ遠方からきんしゃった(いらっしゃいました)」と労をねぎらうレベルなのである。JR、福岡市営地下鉄がとかく便利で、終電を逃し、タクシーで帰っても3000円前後で家路につくことができる。

この「終電を逃してもタクシーで数千円」は、「深夜まで飲む福岡人」をサポートしている。

「深夜まで飲める福岡」の裏付けデータとしては、大都市比較統計年表の「深夜における酒類提供飲食店営業数」を確認すれば一目瞭然だ。2013年のデータでは、東京都区部の3万6622店には及ばないものの、福岡市(6846店)と北九州市(5826店)の合計1万2672店は、横浜市(7267店)+川崎市(3491店)の合計1万758店より多い。人口は「横浜市+川崎市」のほうが「福岡市+北九州市」よりも2倍以上多いのに、深夜まで営業している店は福岡県のほうが多いのである。

この数値データは「いかに福岡人が夜遅くまで飲食をしているか(経済活動がおこなわれているか)」の裏付けといっていい。「東京は飲み会で帰るのが早い」と筆者は思っていたが、こうして数字でみると「福岡人が深夜まで飲み過ぎ」という言い方もできるのかもしれない。どっちが良いか悪いかは、人それぞれである。

長崎洋二
観光経営研究者
福岡県生まれ。観光経営、MICE(国際会議などのイベントマネジメント)、ホスピタリティ・マネジメントを研究。外資系、日系大手のIT企業、広告代理店の現場で培ったビジネス経験と学術的視点を融合させ、大学や企業で講師を務める。
(写真=iStock.com)
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