1カ月の納期を3日に短縮した大投資

鋳物の型には金属で造られた「金型」と、砂を固めた「砂型」があります。何度も使える金型は量産に向いており、1回ごとに壊す砂型は少量生産に向いています。試作に使われるのは砂型です。

「3Dプリンター+職人技」でオンリーワンを造る●3Dプリンターで造られる砂型(写真上)と金型(同下)。最後は職人の手で仕上げていく。継ぎ目なく複雑な加工ができるのが特徴。

従来の砂型の製造方法はまず、職人が図面通りに木を削り出し、造りたい鋳物の模型である「木型」を造ります。次に木型を砂に埋めて、型を取る。砂を固めたら2つに割って中の木型を取り出し、再び接合させて砂型の完成です。複雑な形状のエンジンであれば20ほどの木型が必要になるそうです。発注から納品まではおよそ4週間かかります。

それに対して積層砂型工法では、特殊な砂にレーザーを照射して固化させ、3D CADデータから直接造形していきます。それにより、木型の製造工程を省いたのです。3Dプリンターによるデータ作成に1日、砂型造形に1日、鋳造に1日。なんと1カ月の納期を3日に短縮したのです。

コイワイはその技術をクライアントに営業をするだけでなく、国内外の展示会に積極的に出展しました。この革新的な技術は、さまざまな分野の研究者、技術者たちの目に触れ、その出会いから、航空宇宙や医療業界への進出が始まりました。

海外企業も注目します。11年にインドの展示会に出展すると、タタ自動車の技術者が多数訪れ、コイワイの技術に感嘆し、取引に発展しました。現在はタタ自動車のエンジン部品の試作に携わっています。

さらに12年、次なる3Dプリンターである金属粉末積層装置を導入。これは電子ビームまたはレーザービームによってコバルトクロム材やチタンの金属粉を溶かして固めながら、金属の立体を直接造形する工法です。「型に溶融金属を流し込んで鋳物を造る」という工程を省くことにより、さらに納期を短くしたうえ、より精密な加工を実現したのです。

長年培った職人の技術と先端技術を融合させている。つねに自己研鑽を続け、リーディングカンパニーとして一歩先を行くコイワイに、競合は追いつけないのです。

現在、同社の砂型積層装置は5台、金属粉末積層装置は4台。どれも1台1億5000万円程度と、売上高20億円の企業としてはかなりの投資額です。攻めの経営といえます。