ADHDの診断は生きづらさを軽減する第一歩

しかし、こうした頑張りや危機感は、障害がない人にはなかなか理解してもらえないことが多いのです。ミサさんの例のように、同性で同年代であっても、ADHDという障害の理解が進まないと、気力や活力、気分の問題として見逃されてしまいがちです。

そうした意味で、ADHDの周知が進む今の潮流は、これまで見逃されてきた事態を確実に変えつつあると思います。

ADHDについて、「昔はこうした人たちを診断してレッテルを貼ることはなかったのに、どうして今になってレッテルを貼ろうとするんだ?」という批判もあります。

しかし、これまでADHDと診断されずに生きてきた人たちは、自分は周りとは違う、どうして、みんなみたいにちゃんとできないんだろうと自分を責め続けることしかできませんでした。そのために、就職や結婚を「手の届かない夢」とあきらめてしまうことが多々あったと想像できます。自尊心が傷つくだけで人生が終わってしまうなんて、悲しいことではないでしょうか。

ADHDの人たちは、生きてきた年数分だけ、周りとの違和感、生きづらさを十分体感してきています。診断を受けることは、これまで医学が積み重ねてきた知見に基づく治療や対応方法を得ることであり、違和感や生きづらさを軽減していく第一歩になるのです。

中島美鈴(なかしま・みすず)
臨床心理士
1978年福岡県生まれ。専門は認知行動療法。2001年、広島大学大学院教育学研究科修了。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などの勤務を経て、現在は九州大学大学院人間環境学府博士後期課程に在学中。福岡保護観察所などで薬物依存や性犯罪加害者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。著書に『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン』(光文社新書)、『私らしさよ、こんにちは』(星和書店)、共著に『ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック』(星和書店)などがある。
(写真=iStock.com)
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