「門前の小僧、習わぬ経を読む」とはこのことか。安倍内閣の閣僚たちが行う国会答弁が、安倍晋三首相に似てきている。「1強」といわれる力を背景に野党を見下したような答弁を続ける安倍氏が得意とするのは「ご飯論法」。相手の質問の趣旨をはぐらかして、ずれた答弁をする手法だが、野党から集中砲火を浴びる片山さつき地方創生相らも、ご飯論法を使い始めた――。
流行語大賞の候補にもなった「ご飯論法」とは
まず「ご飯論法」とは何なのか、復習しておきたい。
AさんがBさんに「今日、朝ご飯食べた?」と聞いたとする。
Bさんは朝、パンを食べた。しかし、ある事情でAさんに朝、食事を取ったことを伝えたくない。
その時、Bさんは「今朝は、ご飯は食べていません」と答える。これが「ご飯論法」だ。
Aさんが聞いた「ご飯」は、コメかパンかを聞いているのではない。「朝食」を取ったのかを聞きたかったのは明らかだ。だから本来なら「はい。食べました。パンを食べました」などと答えるべきだろう。
ところが「ご飯」をコメという意味で聞かれたと意図的に解釈して否定的な答えをするのが「ご飯論法」のミソだ。
「加計理事長との食事は問題と思うか」という質問をはぐらかす
安倍氏は、今年の通常国会で、この手法を使った。
例えば、ことし5月の衆院予算委員会のやりとりを紹介しよう。加計学園の加計孝太郎理事長と食事をするようなことが問題だと思うか、という野党議員の質問に対し安倍氏は「食事をごちそうしてもらいたいから、国家戦略特区で特別にやるというようなことは考えられない」と答弁。
質問者が聞いているのは、利害関係人となる可能性のある加計氏と食事することの是非なのだが、食事をごちそうになるために便宜供与することはない、と論点をずらしている。
安倍氏が「ご飯論法」を駆使することは労働問題に詳しい上西充子法政大教授がツイッター上で紹介し、広がったといわれる。「ご飯論法」は今年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされている。