同じエコノミーでも「エグエコ」と「プレエコ」は違う

再開にあたり、座席設定も見直された。中止した機材は、当初はビジネスクラス64席、エグゼクティブエコノミークラス117席の計181人乗りだった。エグゼクティブとは座席の幅やピッチがアップグレードしたものだ。しかしサービス内容はエコノミークラス相当で、避ける客が多かったようだ。2008年に廃止され、エグゼクティブ117席はビジネス36席に置き換わり、全席ビジネスの計100席での運航となった。

今回再就航した新型機材は全席ビジネスとはしていない。かわりにプレミアムエコノミークラスを設け、ビジネス67席、プレミアム94席の計161人乗りとした。エグゼクティブとプレミアムではなにが違うのだろうか。

上:世界最長路線の「プレミアムエコノミー」の座席/下:世界最長路線の「ビジネスクラス」の座席(写真提供=シンガポール航空)

航空業界ではこの10年ほどの間にプレミアムエコノミークラスを設けるエアラインが増えた。当初はシートピッチを拡大しただけだったが、昨今ではサービス内容がビジネスクラスに近付いている。搭乗前の機内食予約や受託手荷物の容量拡大、優先チェックイン、優先搭乗、専用のワインも提供される。

「プレエコ」はエコノミークラスより1.5~2倍ほど高い

こういったサービスは、団体旅客のような扱いを嫌ったり、出張手当の削減でビジネスに乗れなくなったりしたビジネスマンに支持され、各社がプレミアムエコノミーを増やしている。2008年に廃止ししたときの2クラスとは状況が変わっているのだ。航空料金は、エコノミークラスより1.5~2倍ほど高く設定している。こうした高単価の座席設定からも、レジャーではなく、ビジネスユースを狙っていることがうかがえる。

世界銀行のレポート「Doing Business 2018」によると、ビジネスが展開しやすい国190選において、シンガポールはニュージーランドに次ぐ2位だ。グローバル企業ではアジア地域の本部をシンガポールに置く流れが強まっており、ニューヨークとシンガポールを結ぶ直行便にはこうした企業幹部のニーズが見込まれている。

高速Wi‐Fiもあり、通信環境での不便さはない

燃費以外の機材の進化も、超長距離路線開設の後押しとなっている。炭素繊維の機体は与圧を高めることができ、上空でも地上により近い気圧に設定できるようになった。また、機内の湿度も上げられるようになった。衛星モデムを使った高速Wi‐Fiもあり、通信環境での不便さはない。

ソフト面での進化も著しい。シンガポール航空は独自の顧客サービスとして予防医学を取り入れた機内食や機内睡眠の案内、ストレッチなどを提案している。搭乗客は出発48時間前からモバイルアプリをダウンロードし、ウェルネスプログラムを始められる。搭乗前から体調を整えるというのは、超長距離路線に対する顧客の不安を払拭する試みだろう。