一方、縮小傾向にあり、新規参入がほとんど見られなくなった貸金業において、08年新しいビジネスモデルを立ち上げたのが、ソーシャルレンディングサービスの「maneo(マネオ)」だ。借り手と貸し手がともに同社に登録し、双方を結びつける仲介業と呼べるだろう。最大の特徴は、借り手側が目的に応じて金額や期間、金利を設定する“オーダーメードローン”である点だ。

同社の妹尾賢俊社長は、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に10年間勤めた後、3年前にマネオを立ち上げた。その妹尾社長はこう語る。

「銀行などでは個人に対し、住宅、教育、自動車程度しかローンが組めない。冠婚葬祭、ペットの治療費、急な引っ越しなど、個人が急に必要になる資金需要に応えるシステムをつくりたかった」

銀行員時代、消費者金融の金利の高さや過剰融資にも違和感を覚えていたのだろう。消費者金融よりも低利で融資可能なシステムの構築に腐心したのである。しかし、本来資金を必要とする個人への貸し付けが、総量規制によってできないケースもあるという。

「年配の男性から今朝、切羽詰まった声で電話がかかってきました。即日融資の申し出でしたが、無理だと答えると、がっかりしたように電話を切りました」

月末だと気づいたのは、受話器を置いたあと。おそらく、返済の目処が立たず、藁にもすがる思いでダイヤルしたのだろうと妹尾社長は声を沈ませる。今後、さらにこのようなケースが増えるのではと、懸念するのだ。金融業界に詳しい経済評論家の平野和之氏はこう語る。

「業界全体の自浄努力は必要だが、多様なサービス形態を認めるべき。総量規制を目安にするのは理解できるが、ルールにするべきではない」

貸金業者に加担する気は毛頭ない。しかし、改正法完全施行は、カネとの付き合い方について国民全体で見つめ直す機会なのかもしれない。

(宇佐見利明=撮影)