※本稿は、ラリー遠田『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論 』(イースト新書)の第4章「なぜ、『アメトーーク!』『ゴッドタン』『水ダウ』はウケているのか」を再編集したものです。
攻めの姿勢を貫く『水曜日のダウンタウン』
『水曜日のダウンタウン』(TBS)は、夜10時台というプライムタイムの放送枠でありながら攻めの姿勢を貫き、数々の伝説的な企画を手がけて世間に話題を振りまいてきた。問題を起こしてBPO(放送倫理・番組放送機構)に意見書が寄せられたり、炎上的な騒動を起こしたりしたこともある一方で、チャレンジングな企画内容は業界内で高く評価され、二度のギャラクシー賞を受賞している。
熱心なテレビ視聴者やお笑いファンはもちろん、その面白さは一般レベルにも浸透している。いまではTBSを代表するバラエティ番組のひとつに成長したと言っていいだろう。
この放送枠では、もともとダウンタウンのバラエティ番組『リンカーン』が放送されていた。その終了後に始まった教養バラエティの『100秒博士アカデミー』が短命に終わり、次にダウンタウンを起用して別の番組を新たに立ち上げることになった。そこで、気鋭のディレクターである藤井健太郎に白羽の矢が立った。
スタッフがダウンタウンと勝負する
藤井は、これまでに『クイズ☆タレント名鑑』『テベ・コンヒーロ』などの番組を手がけてきた。最近の地上波テレビでは見られないような“悪意”のある笑いを追求する番組作りを得意としている。
そんな藤井がダウンタウンをMCに据えて新たにつくったのは「説を検証する」という形式の番組だった。プレゼンターとして毎回芸人がスタジオに出てきて、ひとつの説をプレゼンする。その検証の過程がVTRとして流される。最後にダウンタウンやスタジオのゲストがそれにコメントをする。
この番組の特徴は、ダウンタウンの番組でありながら、ダウンタウン自体の面白さをメインにしていないということだ。番組スタッフが面白VTRをつくって、スタジオにいるダウンタウンと真正面から対峙する。面白さで純粋に勝負を挑んでいるのだ。この点こそが、ほかにはない大きな特徴である。