「失敗すれば全財産を失うから、やっぱりこわい」
沙織さんがこの3年間の「不動産投資」で感じた魅力は次のようなものだ。
第2の収入があることは、安心につながる。不動産投資のリスクヘッジは「会社員である」ことだが、同時に会社員であるリスクを不動産投資でヘッジしているとも言える。
2)自分に決定権がある
どの物件を購入するか、いくらで貸すか、どうリフォームするか、あらゆる決定事項を上司にお伺いを立てることなく、すべて自分で決められることに自由さを感じる。
3)視野が広がる
人との出会いはもちろん、経済のニュースをチェックしたり、リフォームの参考にインテリア雑誌を読んだり、いろいろな方面から新しいことを知ることができるように。
とはいえ、沙織さんはリスクに関しても十分に理解している。「投資には、リスクがつきもの。失敗すれば全財産を失う可能性もあるから、やっぱりこわいです」と浮ついたところは一切ない。
だからこそ、想定されるリスクをすべて挙げて、それを解消するための手段や方法をあらかじめ用意しておくことも必要と言う。
「想定されるリスクとしては、まず家賃滞納が挙げられます。実際、過去に外国人の方に家賃を滞納されたことがありました。いくら連絡しても『ニホンゴワカリマセン』の一辺倒。保証人の方がしっかりした方でしたので、そのときは何とかなりましたが、弁護士にも相談しましたね。また予想以上に部屋を汚されてしまい、多額のリフォーム費がかかるのもリスクのひとつ。これは契約前の入居申込書を見る段階で、入居者の属性を見極める力が必要。経験とともに養われていく力ですが、時には不動産屋さんなど専門家のアドバイスもいただきます。さらに、地震や津波などのいわゆる災害リスクもありますが、これは保険でカバーするしかないですね」
リスクに対しては、専門家の助言や保険のほか、貯金や第2の収入も重要。その点、沙織さんの場合、会社員であることがリスクヘッジになっているのだ。加えて、前述した購入物件の基準以外にも、自分なりの“不動産ルール”を決めて、そのルールに従って購入すれば、リスクを軽減することができるそうだ。
部屋の中、外までくまなく、物件選びの11項目チェック
具体的に物件の目星がついたら、現地まで足を運び、さらに以下の11項目のリストをチェックしていくのだ。このリストから「1つでも外れるものがある」場合は、どんなに魅力的な物件でも絶対に買わない。“自分が住んでもいいと思えるかどうか”という視点も欠かせない。
□ 洗濯機置き場が室内にあるか
□ 収納があるか
□ ベランダからの景色に問題はないか
□ ポストが封鎖されている部屋が多くないか
□ 他の部屋の住人の雰囲気はよいか
□ 共用部分の掃除は行き届いているか
□ 騒音や異臭はないか
□ 過去に事故がなかったか
□ 駅からの徒歩ルートは安全か
□ 近くにコンビニエンスストアはあるか
購入したあとも、リフォームや清掃などの業者任せにせず、自分でできることは頭と身体を使ってやるようにしているという。
「退去した人が、旧型のテレビと布団を残していったことがありました。業者に問い合わせると、処分費用が3万円と言われたので、休日に自分でやることに。リサイクル費用に約4000円、交通費が約6000円かかりましたが、休日に2万円で働き、よい汗を流したと思えば大したことではありません。それにしてもテレビは重かったです……」