しかし、生活状況について調査した項目はあります。男性の場合は生活に困窮している人ほど再犯しやすい傾向が見て取れますが、女性は生活状況が再犯に影響することはあまりないようです。生活困窮から万引きをした人の割合はそもそも男性のほうが高い傾向にあるので、そのことも影響しているのでしょう。

就労状況別に再犯率を見たときも同様のことが言えます。男性は安定した職業に就いているか、不安定な職業なのか、はたまた無職なのかで、再犯率にはっきりとした差が出ていますが、女性の場合はそれには左右されないようです。

前科のない万引き事犯者 就労状況別再犯率(2014年度版犯罪白書より)

一方で経済状況別再犯率を見ると、男性は収入が上がるほど再犯率が下がります。これはある意味わかりやすく、買えるお金があるのであれば盗まないということです。しかし女性は収入が増えるのと反比例して再犯率が増えます。女性が万引きする理由も再犯する理由も、「お金」ではなく別のところにあるのだろうということが見えてきます。

何度服役しても、出所後すぐ盗みたくなる

服役したあと社会に戻ったところで、経済状況は改善されないことがほとんどです。悲しいかな、前科があれば就労は困難な現状があり、社会復帰できず経済的にさらに厳しくなることも考えられます。そうなれば服役以前に生活のために万引きをしていた人は、再び同じ理由から万引きせざるをえないでしょう。そうならないための支援、治療環境づくりが必要です。

同じことが、別の問題を抱えている人にも言えます。刑務所は罪を犯した人が「反省」をし、みずからの犯した罪と向き合って、更生する場所です。けれど、その人の持つ問題を解決してくれる場所ではありません。依存症を治療する場所でもありません。

刑務所にいるあいだは万引きできません。それが本人の自信になることもあります。これは服役経験のある薬物依存症の人からもよく聞く話です。

彼らはこれを「無力化された」と表現します。自分のなかにいた、薬物への悪魔のような渇望が力を失うのです。刑務所のなかでは薬物は手に入れることも使うこともできませんから、当然のことです。

そして「自分はこれで真人間になった」、「依存症が治った」と思い込むのです。憑き物が落ちたような気分になり、「出所したあとは、もうそんな気は起きないはずだ」という自信までわいてくる……のですが、それは偽りの自信でしかありません。