そこでやみくもに厳罰化を考えてもやはり現実味がないので、私は「早期発見・早期治療」を提案します。まるでがん治療のようですが、まったく同じ考えです。はじめて検挙された人は、相応の処分と治療とをセットにして言い渡す、というものです。本人たちですら「意外と軽い」と思う処分を下すだけだと、ますます常習化するだけです。

なるべく早い段階で治療につなげ、「盗らない」方法を身につけることができれば、そこからの回復は早いと思われます。

しかし依存症のむずかしさは、「逮捕されなければ変われない」一方で、「逮捕だけでは変われない」点にあります。

それは万引きの再犯の多さにも表れています。

「平成26年版 犯罪白書」はサブタイトルに「窃盗事犯者と再犯」とあり、万引きをはじめとする窃盗における再犯がさまざまな角度から考えられています。再犯とは、一度検挙された者が再び罪を犯して検挙されることをいいます。このなかでは、「前科のない万引き事犯者」の再犯についての分析が重ねられます。

全体の約4分の1――これが万引き事犯者の再犯率です。とても高いです。その他の犯罪もわずかに含まれますが、ほとんどが窃盗で再犯しています。

女性は年齢があがるほど再犯率もあがる

窃盗にはさまざまな手口がありますが、同調査では「前科のない万引き事犯者のうち窃盗再犯を行った者」136人中、9割以上が万引きで再犯していることも明らかになっています。万引きの罪を犯した人は、次も万引きで再犯する傾向があるとわかりました。

年齢別に見ると男性の40~49歳、女性の65歳以上が特に高く、女性は全体として年齢があがるほど再犯率もあがります。

注目してほしいのは、窃盗の「前歴」があるかないか、ある場合はその回数別に見た再犯率です。一瞥して、前歴が多いほど再犯率も高いことが見て取れます。

前科のない万引き事犯者 窃盗前歴の有無・回数別再犯率(2014年度版犯罪白書より)

犯罪白書では「万引き事犯者」と大きなくくりで調査しているため、その背景にあるものは見えてきません。たとえばこのなかには摂食障害の問題を抱えている人や、認知症から万引きしている人、依存症になって万引きしている人がいるはずですが、それは数字には表れません。