プロのプロジェクトマネジャーは人材が足りていない

――企業にとって、導入のメリットは。

プロジェクトマネジメントは、単にタスクを管理するためだけのものではない。組織の戦略や変革を効率的かつ効果的に遂行するための手法といえる。最近の変化のスピードが速く競争が激しい市場環境においては、個々の企業が「何を」やっているかでは違いを出しづらい。「どのように」やるかで大きな競争優位性を生み出すようになっており、そこに寄与している。

どこの国でも同じだと思うが、アメリカでもこれまでは組織によってプロジェクトの進め方がバラバラだった。人が辞めたり異動したりすると、その人が持つ知識や経験も一緒に消えてしまい、新しい人が加わるとその組織独自のやり方を身に付けるのに時間がかかっていたが、プロジェクトマネジメントの手法により、組織の効率的な運営ができるようになっている。

――アメリカではどのような動きがあるか。

PMIが強力に支持し推進してきた法案であるPMIAA(プログラムマネジメントの改善と説明責任に関する決議)が、2016年にオバマ前大統領の署名を経て制定された。プログラムマネジメントとは、相互に関連するプロジェクト群を管理するものだ。連邦政府でのトラブル案件の分析に基づいたプロジェクト視点では不足があるとの認識が、法律制定の背景にある。連邦政府全域での改善と強化が図られるため、標準に基づくプロジェクトマネジメントとプログラムマネジメントの実践や、経験豊富なPMPの活躍が期待される。

さらに、この法律は調達標準でもあるため、公共事業に関わる民間企業にも、プログラムマネジメントおよびプロジェクトマネジメントの導入が広がっている。似た動きが、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの政府でも進んでいる。

――どのような組織で活躍の余地があると考えられるか。

成長中の組織にも縮小中の組織でも、必ずプロジェクトは存在する。業界や業種にかかわらず、また規模の大小にもよらない。17年からの10年間に、プロジェクトマネジメント業務に関連する雇用は33%増加すると試算しているが、人材は足りていない。プロフェッショナルのプロジェクトマネジャーは、将来性に富む職業といえる。

(構成=大井明子 撮影=向井 渉)
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