健康寿命が短い県の3つの理由とは?

一方で平均寿命・健康寿命のランキング下位に目を向けると、どちらもワースト1位は青森県で、ワースト5には秋田県と岩手県の東北北部3県が名を連ねる。東北大学の辻教授はこう話す。

写真=iStock.com/Paul Bradbury

「人の寿命を考えるときには当然、病気になりづらいほうがいい。日本人の病気、とくに生活習慣病の原因として大きいのは、『喫煙』と『高血圧』です。『高血圧』を招くのは、日頃の食生活。私自身、何十年も宮城で暮らしているのですが、東北の人は塩辛いものが好きで、塩分を過剰に摂取しがちな傾向がある。食生活の文化もランキングにも表れています」

もう1つ、辻教授がポイントに挙げるのは運動、特に歩数との関係だ。

「雪国のような厳しい気候だと、どうしても外で運動する機会が減ります。さらに、都会と地方を比べると、日常の歩数に差が出る。東京や大阪などの都会では、交通網が発達している分、電車通勤で駅まで歩きます。それに対し、地方では近場でも、すぐに車で移動してしまう。私も東京に出張すると、普段の歩数より3000歩増えますからね」

都会人は注意! 引退後の不健康要因

実際に、厚生労働省が発表している20歳以上の男性の1日あたり歩数の都道府県別ランキング(平成22年)を見ると、1位から兵庫県、東京都、神奈川県、奈良県、千葉県と都市圏が並ぶ。対して、最下位の47位から鳥取県、青森県、新潟県、和歌山県、秋田県といわゆる地方が続く。

歩数と健康に関して辻教授はさらにこう続ける。

「ただし、都会に住んでいるからといって安心はできません。特に男性は、現役で働いている60歳くらいまでは通勤をするため歩数が多いのですが、引退した60歳以降は急激に歩数が減ることが調査の結果わかっています。引退後は意識的に運動する必要があります」と警鐘を鳴らす。

東京大学の渋谷教授は、さらに健康格差を生む社会的な要因や経済的影響も挙げる。

「健康長寿のためには、自分が健康に気をつけるだけでなく、働き方や人とのつながりなど日常生活を送るコミュニティの醸成が欠かせません。経済的な問題も影響してくると考えています」