人生100年時代。仕事が変わるのと同様に、住む場所を変える人も多くなるはずだ。いま住んでいるところ、夫婦どちらかの故郷、はたまた第三の新天地……。健康で、長生きできる。そんな場所はどこにあるのか検証した。

日本一、健康で長生きできる県はどこか

人はどこに住んだら、元気に長生きできるのか――。

本企画では、全国47都道府県の平均寿命と健康寿命のランキングを紹介する。

長生きの度合いを測る平均寿命はもちろん気になるところだが、近年注目を集めるのが健康寿命だ。日本における健康寿命の提唱者である辻一郎・東北大学教授はこう語る。

「健康寿命は、シンプルにいえば、『健康に生きられる期間』のこと。何をもって健康とするかの定義は議論がありますが、基準の異なるWHO(世界保健機関)と日本の厚生労働省の調査ともに現在、日本が世界一の『長寿国』になっています」

今回のランキングは、2018年7月に医学雑誌「ランセット」に掲載された調査結果をもとに作成した。調査グループの代表である渋谷健司・東京大学教授が解説する。

「この調査は、各都道府県の平均寿命と健康寿命について、1990年から2015年までの多角的なデータから分析しました。調査では、この25年ですべての都道府県で平均、健康寿命ともに延びているという結果が出ました。ただし、その伸び幅には各都道府県で差が出た。つまりこの25年の間に、地域間の“健康格差”は広がったと考えられるのです」

福井・長野よりも長寿だった滋賀県

世界一の長寿国で、健康で一番長生きできる場所はどこなのか。ランキングを詳しく見ていこう。

平均寿命・健康寿命とも上位を見るとベスト3は滋賀県、福井県、長野県が入った。「幸福度ランキング」で1位の福井県や県を挙げて“健康長寿日本一”を目標に掲げる長野県が上位にくるのは、納得の結果といえる。しかし、両ランキングで健康有名県を抑えてトップに輝いたのが滋賀県だ。正直、あまり長寿のイメージはない。この結果に対して渋谷教授は、「滋賀県は、健康寿命の面で非常に成績が良かった。死亡率や障害リスクなどすべてにおいて全国平均以上だ」と語る。その秘訣はどこにあるのか。

滋賀県の「健康寿命推進課」担当者は、「特別な事業を行ったわけではなく、科学的根拠に基づいて、ヘルスプロモーションの理念に沿って地域活動を行ってきました。県、保健所、市と町がそれぞれの役割に応じてPDCAサイクルを着実に実行できています」と話す。実際に県内19の市や町で健康増進・食育推進計画をつくり、進めているという。同じような取り組みはほかの都道府県にもあるが、施策を徹底するからこそトップの座にいるともいえる。

滋賀県は25年での「平均寿命」「健康寿命」の延びのランキングでも、平均寿命は4.8歳、健康寿命も4.1歳と1位となっている。つまり滋賀県は近年どんどん健康になり、寿命を延ばしているのだ。