手書きの文字や数字が判読できるようになった

AIについても、できるのは特定のことですが、重要なのは、できることの範囲が、この数年で飛躍的に広まったことです。この点において、従来のコンピュータ一般と、AIには大きな違いがあります。

多くの人は、従来のコンピュータ一般とAIを区別していませんが、コンピュータ一般とAIには決定的な違いがあります。従来のコンピュータは、作業の前提として人間の手によるプログラムが必要でした。しかしAIは、自らの機械学習によって、できることの範囲を広げます。

AIができるようになったことの典型的な例がパターン認識で、図形の認識や、人間が日常的なコミュニケーションで使う自然言語の理解ができるようになりました。

パターン認識は、コンピュータ技術が進化するなかで、長い間の夢でした。たとえば、人間の写真を見て、男か女かということは、人間ならすぐに見分けられるのに、コンピュータはできなかったのです。ところが、AIは、いまやかなり正確に、見分けることができるようになりました。

これまでできなかったパターン認識にブレイクスルーが生じたのです。それによって、非常に多くのことができるようになりました。

たとえば、手書きの文字や数字が判読できるようになりました。また、アングルなどが異なる写真を見ても、同じ対象物を撮った写真かどうかを認識できるようになりました。さらには、自然言語が理解できることによって、人間と会話によるコミュニケーションが成立するようになりました。

ニューロンの働きをコンピュータがまねる

このことによって、さまざまな仕事をAIが代替できるようになったのですが、その具体例は後述するとして、どのようにしてAIのパターン認識が可能になったかについて、触れておきましょう。

ディープラーニングと呼ばれる機械学習の技術が、パターン認識を可能にしました。ディープラーニングは、ニューロン(神経細胞)の働きをまねた仕組みであるニューラル・ネットワークをコンピュータに作り、大量のデータによって学習させるものです。

たとえば、膨大な量のネコの写真を、ニューラル・ネットワークを組んだコンピュータに見せれば、新たにネコの写真をコンピュータに見せたとき、それがネコであることを、コンピュータは認識します。一見、似ている別のネコ科の動物の写真を見せても、ネコではないと判断します。