なぜ、65歳以上の親は子供へダメ援助をしてしまうか
シニア女性向け雑誌『ハルメク』(2017年11月号)に掲載された「子供への援助がかさんだら」という記事は読者に大きな反響を呼びました。「子供」といっても、そのほとんどがすでに仕事や家庭を持つ「大人」。それでも今なお「援助」を続けるシニアの読者に対して、ファイナンシャルプランナーがアドバイスするといった内容でした。今年2月号では、その記事の続編として、「子供へのダメ援助をいい援助にかえる」という特集を組みました。
この続編の特集にあたって、私が所属する「ハルメク 生きかた上手研究所」では、2017年11月に、65歳以上の実の親がいる子供400人(※主に30~40代の未婚・既婚者)に親の援助の実態に関するwebアンケートを実施しました。
※回答者は男性211人、女性189人。年齢別では35歳未満が37人(学生を除く)、35-39歳が75人、40-44歳が140人、45歳以上が148人です。結婚の有無では、<未婚・子なし>が164人、<既婚・子あり>が61人、<既婚・子なし>が175人です。
「あなたは、1年以内に実の親または義理の親から日常の金銭や物の援助を受けたことがありますか?」(※単一回答)という問いに、「ある」と答えた子供は、400人のうち131人(32.8%)でした。子供への「援助」に悩む親が多い割には少ない数字です。
「ハルメク 生きかた上手研究所」はこのアンケートを実施する前にある仮説を持っていました。それは、「子供は親から援助を受けている意識が希薄になっている」というものです。親も子供に援助をすることが、当たり前になっているのではないかと考えられるからです。そのため、以下の事実に即した問いも投げかけました。
「あなたが、日常のお金について、1年以内に体験したことを教えてください」
小遣い、食材費、光熱費など「日常のお金」に関する13個の項目を設定し、そのお金を親からもらったり支払いを肩代わりしてもらったりした場合はその選択肢にチェックしてもらう方式です(※複数回答)。その結果、選択肢を1つ以上チェックした子供は270人で、全体の67.5%でした。
「未婚」の子は「既婚」の子の2倍以上の24万円ももらっていた
つまり7割近くの子供が何かしらの金銭や物を親から受け取っているにもかかわらず、「援助を受けている」と自覚があるのはわずか3割。親からの金銭や物の援助に対し、本人の意識と実態には、大きな開きがあることがわかったのです。
この親からお金の援助を受けている270人を、世帯状況別に分類すると、<未婚・子なし>が86人、<既婚・子あり>が150人、<既婚・子なし>が34人でした。
また、270人の親からの援助の年間平均額は14万8000円。この金額は子供世代の世帯状況に応じて大きな差がありました。<未婚・子なし>が23万8000円、<既婚・子あり>が10万6000円、<既婚・子なし>が9万7000円で、<未婚・子なし>の援助額が突出して多かったのです。