子供の来場者数はカウントしていないが、16年から入場口で子供用リストバンドを配布したところ、初年度は用意した1000本ではまったく足りなかったという。そして翌年、3000本を用意したが、それでも不足した。

「これまで一緒にフジロックを作り上げてきたお客さんが年齢を重ねて、子供が生まれると、なかなか会場に足を運べないかもしれない。こちら側から『足を運ぶきっかけ』を作りたかったんです。それに、当初はキッズランドに来る子供は幼児が多かった。それが小学校低学年となり高学年となっていって、中学校に上がると、学校や部活も忙しくなるだろうし、フジロックからは離れてしまうのかな、と。でも自分たちが洋楽に出会ったのは中学生の頃でしたし、この場にこの世代がいてほしいという思いもあります」(石飛氏)

準備不十分で来てしまう人もいる

増えつづける子供連れ来場者のために、優先トイレを設けたり、各ステージの救護所でオムツ替えや授乳ができるようにしたりと、対応も進めている。だが石飛氏は、「子連れに優しい」というイメージが先行して、軽装備で来場してしまうケースを懸念しているという。

2002年開催時の授乳所(画像提供=SMASH)

「フジロックのお客さんは、全体的に見るとマナーがいいんです。しかし、この2年くらいは、『フジロックはファミリーに優しい』と誤解した軽い意識で、準備もままならない状態で来場するケースも見受けられます」(石飛氏)

フジロックの会場である苗場スキー場は、最下部でも900メートルの標高があり、夜間はかなり冷え込む。天候も変わりやすく、トレッキング程度の装備がなければ厳しい環境だ。周囲の宿泊施設は限られており、参加者の多くは3日間、キャンプで寝泊まりする。快適に過ごすには、最低限のアウトドア知識と装備が必要だ。

「フジロックは第1回からお客さんと一緒に作ってきたフェスです。第3回から苗場開催になって、徐々に地元の方々からの信頼を獲得してきた経緯もある。フジロックの礎を作ってきた世代のお客さんに、今度は親としてもそうあってほしいと思って、スタートさせたのが情報発信ページ『こどもフジロック』なんです」(石飛氏)